SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

直近開催のイベントはこちら!

EnterpriseZine編集部ではイベントを随時開催しております

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

ResorTech OKINAWA

【オードリー・タン☓玉城沖縄県知事】市民のDX、成功の条件は「信頼」


 沖縄県宜野湾市の沖縄コンベンションセンターを主会場にして「リゾテック沖縄(ResorTech Okinawa)沖縄国際 IT見本市」が開催され、台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン氏と玉城デニー沖縄知事との対談が実施された。(タン氏はオンライン参加)デジタルテクノロジーの力によって新型コロナウイルス感染の被害の拡大の封じ込めに成功したタン氏は、今後の社会においては「人々の相互の信頼こそが最も重要」と語り、玉城知事も沖縄県の持つ文化・風土を活かした産業のビジョンを語った。本記事では、タン氏の特別講演と玉城知事との対談の様子を紹介する。

来沖の経験とインスパイアが活きる

 講演の冒頭、タン氏は沖縄への思いと感謝を述べる。5年前、沖縄に来たタン氏は激しい台風でホテルに閉じ込められた。被害状況や洪水などの状況を観測し、多くの人からの刺激を受けた。その経験は1年後、台湾でIT担当大臣に就任した時に地震や洪水の予測のIoTのシステムに活かされ、今回の新型コロナウィルスの防疫の基盤となった。この時の日本での経験とインスパイアをくれた人々に感謝を述べた後で、タン氏は「信頼」というテーマについて語った。

オードリー・タン氏/玉城デニー 沖縄県知事

「Covid-19によるパンデミックそしてインフォデミック(情報被害)に直面し、社会を守る根本原理が問われました。昔から疫病が起きると人は国境を閉じ、都市を封鎖し、集まりを禁止してきました。そして不安にかられお互いを罵りあいます。最も恐れるべきは、人々の間の信頼が崩れることです。社会を守る原則は信頼です」

 危機的な状況の中で、不信と分断を食い止めるために必要なものは「開かれた政府」だとタン氏は言う。以前からタン氏は、オープンガバメントの活動にコミットをおこなってきた。同時に、「シビックハッカー」(政府が公開したデータをもとに、市民のためのアプリケーションを開発するエンジニア)としても知られる。

 新型コロナウィルスが広がり始めた初期、日本でもそうだったように台湾もマスクをめぐるパニックが起きていた。マスクの供給と需要のバランスが崩れ、政府の対応に批判が相次いだ。2月の初め、マスクが購入できる場所を示す、地図アプリケーションがシビックハッカーによって開発された。タン氏はこれに着目し、シビックテックのコミュニティ「g0v」(ゼロガバメント)の開発するプロジェクトにジョインし、政府公認のアプリとなった。開発した若者には、GoogleMapのAPIを利用したために当初、膨大な使用料が課せられたが、後にGoogleによってこの費用は免除された。

 2月にマスクの配給システムがはじまった。台湾の約6000の薬局、薬剤師、知見を持つ専門家だけでなく、地域コミュニティの中で人々が信頼を置いている薬局によって、処方箋のようにマスクを配給する。台湾では、ICチップ搭載の健康保険カードが普及しており、高齢者や基礎疾患を持つ人が処方箋を受け取るのと同じ方法で、健康保険IDカードによって自動的にマスクを受け取ることができるようになった。

 このシステムはリリース後もさらに改善されていく。当初は特約薬局での受け取りに限られていたが、地理的に厳しい人たちからの意見を踏まえ、公平を期すため、全国のコンビニエンスストアやスーパーでも受け取れるようにした。さらに、カードを差し込むだけで予約ができるようになり、仕事で時間が取れない人や高齢者でも簡単にアクセスできるシステムを実現した。どこかの店でマスクのための行列が出来ていたら、すぐにメンバーが買える場所を教え合うことで、行列は解消された。

 シビックテックのエンジニアたちによって、次々に改善がおこなわれ、マスク配給アプリは進化していった。タン氏の語るイノベーションの原則が反映されているといえる。トップダウンの決定に従うのではなく、市民やコミュニティのメンバーから生まれるという原則によるものだ。

「これは最前線から末端までの人々による集合的な知識によるイノベーションなのです」

 もうひとつのタン氏の原則は、支援については誰も除外せず、インクルーシブなものであるべきという考え方だ。いわゆる「夜の街」の仕事に従事する人には、実名を明かしたくない人もいる。感染拡大を防ぐにはそうした人々の接触や移動の履歴情報も必要になる。感染対策チーム(CCC)にはHIV患者への対応経験のあるメンバーもいたため、こうした配慮ある対策がおこなわれた。実名でなく、プリペイド携帯によるメールアドレスやスクラッチパスのコードネームでも申告ができるようにしたという。

次のページ
徹底的な透明性

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
関連リンク
ResorTech OKINAWA連載記事一覧
この記事の著者

京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

翔泳社 メディア事業部。同志社大学卒業後、人材採用PR会社に就職後1994年から翔泳社に参加。以後、翔泳社の各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在は、嘱託社員の立場でEnterpriseZineをメインに取材・編集・書籍などのコンテンツ制作に携わる。 趣味:アコギ、映画鑑賞。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/13634 2020/12/01 00:31

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング