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データマートレスだからこそ解決できるデータ活用の課題 SAPが描くデータ活用基盤の新しいデザイン

edited by DB Online   2020/12/08 10:00

 データウェアハウスやBIというキーワードが登場してから、既に20年以上の月日が経過している。にもかかわらず、多くの企業でデータの可視化すら思うようにできていない。データ活用は社内の限られた人だけで、企業文化として定着していないため、現実はデータドリブン経営とは大きくかけ離れている。では、どのようにしてデータ活用を阻む課題を解決すればよいのだろうか。「データマートレス」をキーワードに、これからのデータ活用の在り方をみていきたい。

定着しない全社レベルでのデータ活用

 データウェアハウスを構築し、BIツールでデータを可視化できている企業は少なくない。しかし、見られるデータは1週間前や1ヵ月前の集計データで、過去の結果しか得られないことがほとんどだろう。ビジネス環境の変化は激しく、小売業などでは1日前のデータでさえ使い物にならないとも言われる。なるべく新しいデータを見たいとのニーズが現場にあっても、それにどうすれば応えられるかがIT部門ではわからない。

 企業がデータウェアハウスやBIツールを導入していても、全社規模でデータ活用ができていない理由の一つは、十分な処理性能が得られないことにある。性能が足りないために、レポート画面などを立ち上げても見たいデータがすぐには見られない。また、データ活用のためにデータウェアハウスを構築したはずが、データを集めてためることに注力してしまい、いつのまにか大規模データウェアハウスの構築が目的になっていることもある。集めることに注力すると、性能確保が二の次になる。せっかくデータを集めても、データウェアハウスが遅ければユーザーは使わないのだ。

 特に現場では新たな課題解決のために、新しいレポートが見たくなる。そのためにデータを追加して欲しいとIT部門に依頼しても、多くの場合はかなりの時間を要してしまう。なぜなら、IT部門は他にもセキュリティ対策などやるべきことがたくさんあり、忙しすぎてなかなか手が回らないからだ。しかし、IT部門の対応が遅ければ現場は諦め、やはり使われないデータウェアハウスができあがる。現場とIT部門の乖離も、データ活用がなかなか定着しない理由の1つといえる。

データマートレスがこれからのデータ活用基盤の新しいデザイン

SAPジャパン プラットフォーム & テクノロジー事業本部 SAP HANA CoE シニアディレクター 椛田后一氏
SAPジャパン プラットフォーム & テクノロジー事業本部
SAP HANA CoE シニアディレクター 椛田后一氏

 全社レベルでデータ活用する文化の定着に至らない状況を、どう打破すれば良いのか。「最も大事なのはデータベースの性能です」と言うのは、SAPジャパン株式会社 プラットフォーム & テクノロジー事業本部 SAP HANA CoE シニアディレクターの椛田后一氏だ。「何か疑問があって、それを解決するためにデータを見ようとした際に、瞬時に欲しい情報が現れないとユーザーの思考を止めてしまいます。ユーザーの思考を止めないスピードが、データ活用基盤には必要です」と述べる。

 データウェアハウスの処理性能不足を補うために、データマートを構築している例がほとんどだろう。部門ごとの要求に応じ、あらかじめ集計したデータのサブセットを持つことでレポート表示の性能などを補う。しかし、データマートにあるのは集計結果だけで明細データがないため、詳細な明細データをさかのぼりながら原因究明をしたくてもできない。また、データマートに新しいデータを追加するのにも手間がかかってしまい、多くの時間を要するのが一般的だろう。さらに、データマートの集計は夜間バッチなどで行われるため、最新のデータでも1日前の集計結果が精一杯だ。過去の集計データしかなければ、今の状況を見て将来を正確に予測しアクションを起こすことはできない。

 性能が足りないことから生まれる、これらの課題を解決できるのが、インメモリのデータプラットフォーム「SAP HANA」だ。SAP HANAならば極めて高い処理性能があるため、データマートレスのデータ活用基盤を構築できる。「データマートレスは、データ活用のためのこれからの新しいデザインとなります。SAP HANAならデータマートを作る必要はありません。明細データからオンラインで集計し今のデータを可視化、分析できます」と言う。

 データマートレスのメリットは他にもある。部署ごとに用意するデータマートに、重複したデータを持つ必要はなくなる。これにより、全社で常に同じデータを参照でき、企業として整合性のとれたデータをもとに判断ができる。「SAP HANAの場合はOLTP(OnLine Transaction Processing)も高速なので、更新したデータを瞬時にデータウェアハウスに送ることができます。これにより常にデータウェアハウスの鮮度を保てるのです」と椛田氏は言う。

 そもそもデータマートを作らないので、データマートを設計し構築する手間からIT部門は解放される。データマートの日々のデータ更新も必要なく、運用管理の手間とコストは大きく削減できる。減らした結果生まれる余裕は、IT部門がより現場の業務を理解し、どうやってデータ活用をすれば良いかを現場と一緒に取り組むのに使える。

データマートを用意しないため、開発・運用の工数削減やIT部門の業務負荷軽減にも繋がる

データマートを用意しないため、開発・運用の工数削減やIT部門の業務負荷軽減にもつながる
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著者プロフィール

  • 谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

    EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーター かつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリストとして、クラウド、データベース、ビッグデータ活用などをキーワードに、エンタープライズIT関連の取材、執筆を行っている。

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