金融の未来を拓く「オープンファイナンス」:デジタルIDが変革する決済インフラの今

モデレーターを務めたPwCコンサルティングの柴田健久氏は、冒頭でオープンファイナンスの定義について語る。「イギリスでは銀行だけでなく、貯蓄や投資、年金などにサービスを広げていくより広範囲なもの」と紹介した。さらに、EUでは「サービスと人が同じ基盤内で自由に連携できる環境を目指す」との方針を示しており、こうした動きが様々な産業に広がりつつある現状を解説した。

PwC JapanグループのDigital Identity顧問で、OpenID Foundation会長の﨑村夏彦氏は、デジタルアイデンティティの本質的価値について持論を展開した。
私たちの生活の場としてサイバースペースが出てきているわけですが、その中で何かをやり取りしていこうと思ったら、デジタルアイデンティティがないとできません。金融で送金するのも結局相手を確定して送らなければいけない。対面で相手の存在を認識できるリアルスペースと違って、ネット上では互いに相手を認識するためにデジタルアイデンティティが必須です。また、アクセスされた口座情報や残高取引情報なども全てデジタルアイデンティティの一部となります」(﨑村氏)
さらに﨑村氏は、オープンファイナンス実装の要件として「技術的な接続インターフェースやデータ自体の標準化に加えて、契約の統一化や接続料金などのガバナンス面、ビジネス面の標準化も重要」と強調する。「実際、これを標準化した国としない国では、オープンファイナンスの成長に大きな差が出てきている」と指摘した。
