
2024年11月に開始された日本郵政と日本郵便のポイントサービス「ゆうゆうポイント」。既にポイントサービスが数多く存在する中、あえて独自サービスを開始した背景には、日本郵政グループが目指す「みらいの郵便局」構想があり、その実現に向けたDX推進があるという。どのような未来を目指し、またどのような価値を提供しようとしているのか。これまでの経緯と、今後の戦略や目標について、DX戦略部長の杉崎猛氏にうかがった。
全国約2万4000ヵ所に存在する郵便局をDXにどう生かすか
日本郵政と日本郵便は、2024年11月18日より新ポイントサービス「ゆうゆうポイント」の提供を開始。この施策について、EnterpriseZineの読者からも多くの関心が寄せられている。
通信会社や銀行などを中心に数多のポイントサービスが存在する昨今、後発での参入は決して容易なことではない。そんな中、あえて独自のポイントサービスを開始した経緯には、グループ全体でのDX戦略が関係しているという。
「日本郵政グループは、中期経営計画『JP ビジョン2025+』の中で、公共性と収益性の両立を目指したDX推進を1つの柱として掲げています。目的は2つあり、1つ目は、郵便局が国の機関だった時代から培ってきた社会的使命を後世に継承していくこと。2つ目は、そうした財産をもとに、未来に向けて郵便局の新たな可能性や価値を創造していくことです」
そう語るのは、日本郵政のDX戦略部で部長を務める杉崎猛氏だ。杉崎氏は、総務省から郵政事業庁を経て、小泉政権時の郵政民営化の際に準備企画会社の初期段階から参画。民営化後は、日本郵政、ゆうちょ銀行などのグループ会社で経営企画や事業開発などを担当した。現在はグループCDOのもとで、ホールディングスを中心とした日本郵政グループ全体のDX統括を担う。

グループ全体でDXが求められる背景として、「少子高齢化や過疎化による人口減少、物流の2024年問題やドライバー不足、物価上昇など様々な社会課題がある」と同氏。特に地方での人口減少・過疎化は、全国でサービスを展開する郵便局にとって事業基盤の弱体化に直結し、存在意義にもつながる大きな問題だ。
「昨今、商店や役所の支所などがなくなり、活力が失われつつある地域が増えてきていますが、そうしたところにも郵便局は存在し続けています。だからこそ、これまで通りの方法ではお客様の生活や人生をサポートし続けられないという危機感を感じています。
地域の最後の拠り所として自身のあり方を考えれば、郵便や金融事業だけでなく、郵便局が解決できる“地域の困りごと”があるはず。そうした地域の課題やニーズを汲みとり、行政や他事業者と連携することで、守るべきものを守りつつ、新しい価値が提供できると考えています」(杉崎氏)
新たな価値を生み出すアセットとして、日本郵政グループが頼りとしているのが、全国約2万4000ヵ所に存在する郵便局だ。近年ではコンビニエンスストアのように多様なサービスを提供できるようなところも増えてきた。とはいえ、一般的な小売業と同じことをしていては事業の継続は難しく、地域に貢献し続けられないだろう。
「郵便局の強みは、地域に密着し人々に寄り添いながら事業を行うことで培ってきた信頼関係だ」と杉崎氏は語る。その信頼関係を礎としつつ、地域の人々と関係性を築き、事業の柱としていく。それは、郵便局だからこそ思い描くことができる未来像なのだという。ハード(郵便局)とソフト(信頼関係)に加えて、デジタルテクノロジーを活用することで、新たな価値を創造し提供できると同氏は力を込める。
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伊藤真美(イトウ マミ)
フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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