日立がOracle Database@Azureを徹底検証──3社に尋ねた利用価値、基幹系への適用
日立製作所、日本オラクル、日本マイクロソフトが見据える「データベースのクラウド移行」の展望とは

日本企業のクラウド利用が始まってから、20年ほどが経過した。さまざまなITシステムが、既にパブリッククラウドで動いている。しかし基幹系システムは、いまだにクラウド化されていないものも多い。基幹系システムのクラウド化が進まない要因の一つは、“データベースの移行”であり、その課題を解決するサービスの一つが「Oracle Database@Azure」だ。日立製作所は同環境をミッションクリティカルでも最適に運用できるように、いち早く検証しノウハウを蓄積している。今回は、日立製作所と日本オラクル、日本マイクロソフトの3社を招いて話を聞いた。
基幹系システムのクラウド化、データベースが障壁に
企業における基幹系システムには「Oracle Database」が多く採用されている、特に中堅・大手企業においては顕著だろう。クラウド化の波が絶えず押し寄せる中、たとえばMicrosoft Azureへの移行を考えたとき、IaaSとしてOracle Databaseを利用することでハードウェアの管理からは解放される。しかし、運用管理の手間までは減らない。そう指摘するのは日本マイクロソフトの大林裕明氏だ。

他にも「Azure SQL Database」のようなPaaSに移行する手もあるが、基幹系システムのOracle DatabaseではPL/SQLがよく使われており、その移行には手間とコストがかかる。特にミッションクリティカルシステムは「Oracle RAC」で高可用性を確保しているだけでなく、(Oracle Databaseの)Enterprise Editionのオプションを利用していることも多く、IaaSでは対応できないことがある。こうした要因も重なり、基幹系システムのクラウド化は依然として進んでいない状況だ。
もちろん移行先にOracle Cloud Infrastructure(OCI)を採用するケースもあるが、既にAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureでさまざまなシステムを稼働させている企業は多い。そうなると基幹系システムのデータベースだけをOCIで稼働させることは難しく、マルチクラウドでの運用を余儀なくされる。とはいえ、運用管理の手間やクラウド間のレスポンスなど、解決すべき課題は少なくない。
このような状況下、2023年9月に転機が訪れる。Oracle創業者 兼 CTOのラリー・エリソン氏がMicrosoft本社を訪れ、「Oracle Database@Azure」を共同発表したからだ。これはOracle Exadataの環境をMicrosoft Azureのデータセンターに置くというもので、非常に画期的な発表として話題となった。
実は2019年にMicrosoftとOracleは、クラウドデータセンターを直接接続する「Oracle Interconnect for Azure」を発表している。OCIが提供するOracle Databaseの機能を制約なく使える上に、Azureから容易に接続できるため、それぞれのニーズに幅広く応えられる点が特長だ。
その一方、「ミッションクリティカルな基幹系システムを動かすとなると、異なるデータセンター間のレイテンシー問題、アプリケーションとデータベースが分離することによるインテグレーションの手間など、課題は残っていました」と日本オラクルの桑内崇志氏は述べる。

その後、Oracle Interconnect for Azureを利用した「Oracle Database Service for Azure」によってインテグレーションの課題は軽減されているが、顧客からはMicrosoft Azure上でOracle Databaseの最新機能やRACを使いたいとの声は大きかったという。
そうしたニーズに応えるべく、データセンターのフットプリントを小さくする技術開発などを続けた結果、より踏み込んだ協業ソリューションとしてOracle Database@Azureが実現している。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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提供:株式会社日立製作所
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