「Oracle Database@Azure」の魅力と効果、その利用価値は?
「ライバル関係だったMicrosoftとOracleが、Oracle Database@Azureで協業すると発表したことは衝撃的でした」と振り返るのは、日立製作所の森中雄氏。両社のパートナーである日立製作所は、すぐに検証へと動き出したという。

前述したようにOracle Database@Azureは、Microsoft AzureのデータセンターにOCIの環境を置くことで、マルチクラウド環境におけるレイテンシーを大幅に改善可能だ。さらに実運用で重要な料金や支払い方法、監視の統合機能なども提供されており「Oracle Interconnect for Azureで残っていた課題をかなり解消できるものです」と森中氏は評する[1]。
レイテンシーの改善は明らかだが、実際に基幹系システムを動かした際に「業務にどのような影響が及ぶのか。検証では、そうした点も見極めている」と森中氏。特に懸念されたのは、株式や債券の売買といった大量トランザクションの処理、時間内で実施しなければならない大規模なバッチ処理、そして大量データの分析処理など、データベースに大きな負荷がかかるワークロードだ。ミッションクリティカルシステムにおいて問題なく、適切に処理できるのか。森中氏は「クラウド移行後にどの程度の性能影響があるのかを事前に把握できることは極めて重要です。そのため、ワークロードの特徴別にレイテンシーの影響をしっかりと把握しなければなりません」と話す。
また、「基幹システムでは踏み込んだ管理が必要であり、それぞれのクラウドで実現できるリソース監視やデプロイなど、システムの運用・保守方法を明確にする必要がありました」と、日立製作所の片山仁史氏は指摘する。

たとえばサービスのレスポンスが悪くなれば、「まず疑われるのはネットワークかデータベースサーバーでしょう」と、日本オラクルの田子得哉氏。Oracle Database@Azureでは、サポートは密連携されているものの場合によって、ネットワークはMicrosoft Azure、データベースはOCIと問題を切り分ける必要がある。基幹系システムのシビアな運用においては、OCIとAzureの両方の知見をもつ日立製作所が支援することで円滑に利用できるという。
また、日本オラクルと日本マイクロソフトにおいては、“技術的な融合”だけでなく、サービス現場の営業担当者、技術担当者までもが両社における言葉・文化の違いまですり合わせ、対処する必要があると田子氏。そのためにユーザーへの共同提案、実案件におけるノウハウの共有を含め、両社間では極めて密な連携が行われているという。

日本マイクロソフトの松森健明氏は「両社のクラウドをシームレスに連携する。そのために技術的側面からだけでなく、営業や保守プロセスも含めて『マルチクラウドの複雑性』に根ざした課題を大きく改善しています」と述べる。
[1] 参考「日本オラクルと実施した基幹業務向けマルチクラウド構成の共同検証結果をもとに、クラウド移行支援を強化」(2023年11月10日、株式会社日立製作所)