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エストニアと沖縄 、「地域のDX」が生む新たなエコノミー

  「リゾテックおきなわ国際IT見本市」(宜野湾市・沖縄コンベンションセンター:同実行委員会主催)において10月30日、ITを使った業務改善や課題解決につなげるデジタルトランスフォーメーション(DX)の活用方法を探るシンポジウムが開催された。国内外の行政でのDXの取り組みの報告があり、多分野でのデジタル化の可能性が話しあわれ、エストニア、加賀、沖縄の視点から見た地域からのDXの取り組みや、デジタルIDをトリガーにした今後の変革について語られた。

デジタルIDがエストニアでどう活用されているのか?

<p>斎藤 アレックス剛太氏 SetGo Estonia Co-Founder/xID株式会社 Biz Dev Lead</p>

斎藤 アレックス剛太氏 SetGo Estonia Co-Founder/xID株式会社 Biz Dev Lead

 エストニアで行政と連携したサービスの開発を手掛ける「SetGo Estonia」を設立した齋藤アレックス剛太氏は、オンラインでエストニアから基調講演をおこなった。政府が発行するエストニア版マイナンバーカード「デジタルIDカード」を紹介。エストニアではデジタルID(公的身分証)カードの普及率が99%、行政サービスのオンライン化も99%となっている。利用も国民一人当たり、毎日約2~3回であり、提供されているサービスは277を数える。

 デジタルIDカードは政府発行のカードではあるが、行政機関のみではなく民間の利用も可能だ。ただエストニアでも2002年の開始から長い時間をかけて定着してきたという。エストニアのデジタル社会を支えているのはデジタルIDカードに代表される個人認証ID、KSIブロックチェーンによるデータの耐改ざん性、X-Rordと呼ばれる個人情報のデータベース連携という3つの技術基盤である。

 KSIブロックチェーンは、データの完全性を担保する技術としては、書き換えを確実に追求できるブロックチェーンの技術だ。中央集権的、一元的にデータを管理するのではなく、各データベースで管理して、必要に応じて、デジタルIDで認証したうえで、各DBにアクセスできる。これによりシームレスで高速なデータ連携を実現し、官民のデータ連携基盤を形成できているという。

 人口約132万人のエストニアは多くのスタートアップ企業が存在し、世界屈指のIT先進国として知られる。齋藤氏は同国が旧ソ連から独立後、広い国土(九州のおよそ1.3倍)に分散する国民のすべてが住民サービスを利用できるようデジタル化を進めた(苦肉の策として進めざるを得なかった)経緯を説明。現在ではデジタルIDを活用し、納税や投票など社会全般のサービスが利用できるという。

 たとえば身分証明や運転免許など身元証明はもちろん、e-Taxでは確認作業に近い3分程度で処理が済み、携帯端末からログインできるe-Bankingや、あるいは教育現場で教師と生徒を結ぶe-Schoolなど広範囲で活用される社会インフラとなっている。これらはx-Roadと呼ばれる官民データ連携基盤が支えていることも紹介した。

加賀市のユースケースから見る日本における展開可能性

 斎藤氏は自らが携わっているxID(クロス・アイディ)においてエストニアでの知見を日本国内でも提供している。石川県加賀市や茨城県つくば市でも積極的なデジタル化に取り組んでおり、加賀市では電子申請プラットフォームを導入し、スマートフォンだけで手続きが完結できるオンライン行政手続きサービスを始めている。課題抽出に始まり、進行したデジタル化が奏功したのか、マイナンバーカードの申請率は60%を超えたという。

 デジタルID黎明期とされる現在、齋藤氏は「デジタル化は目的ではなく、何かを解決するためにデジタルを使うことが大切だ。沖縄県のDXならば、どんな課題があるのかを抽出し、解決方法を明確にしていくことだ」と考え方を示した。先行する加賀市では課題抽出のワークショップを複数回開催して、窓口業務や市全般の課題を明確にしていったという。こうした課題解決を通して、あらゆる領域、具体的には、交通システムや宿泊予約システム、行政申請サポート、移住促進、観光地ランキングやスポットレコメンドまた法人設立などで活用できることを述べた。斎藤氏の講演に続いて、シビックテックジャパン代表理事 福島健一郎氏、沖縄市経済文化部観光振興課主幹 宮里大八氏、沖縄ITイノベーション戦略センター(ISCO)理事長 稲垣純一氏と斎藤氏を交えたパネルディスカッションがおこなわれた。以下はその要約となる。

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クロストークセッション:DXがもたらす沖縄観光の可能性

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この記事の著者

山本信行(ヤマモトノブユキ)

株式会社Little Wing代表

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