最近のSaaSと言えば、直接販売が中心のサブスクリプションビジネスモデルを連想するかもしれない。しかし、従来から構築してきたパートナー販売ネットワークを維持しつつ、サブスクリプションライセンスへとビジネスモデルの転換に成功した企業も存在する。3D設計及びエンジニアリングのためのソフトウェアを提供するオートデスク日本法人のトップに、同社が経験してきたビジネス変革の歩みについて訊いた。
研究開発とM&Aの両方に投資

――オートデスクの成長の軌跡を紹介したいのですが、最初に会社紹介からお願いできますか。
オートデスクは1982年にPC上で動く2D図面を作成するAutoCADの提供からビジネスをスタートさせました。3Dテクノロジーに関する様々なツールを提供している会社で、モノづくりに関わる人たちをイノベーターと捉え、その人たちにデザインとテクノロジーを通じて新しい可能性を追求、実現してもらうことをサポートしています。
製品開発では研究開発と企業買収の両方に力を入れており、研究開発への投資金額は売上の25%という高い水準を維持しています。また、ここ数年は建築・土木向けのソリューション拡充のため、M&Aも活発に進めてきました。2018年7月のゼネコン向けに3Dデータ管理プラットフォームを提供する「Assemble Systems」の買収を皮切りに、同年11月に施工管理ツールを提供する「PlanGrid」、同年12月に建設工事の入札・調達管理ツールを提供する「BuildingConnected」、2020年7月に建設工事のワークフロー自動化ツールを提供する「Pype」、同年11月に都市開発のためのAIツールを提供する「Spacemaker」を買収しています(図1)。

――現在の製品ラインアップはAutoCADだけの頃と比べると大きく変わりましたね。
製品設計の担当者やデザイナーなど、私たちのお客様は多岐にわたりますが、業種は大きく「建築・土木」「製造」「メディア&エンターテイメント」の3つに分類できます。また、製品も「設計開発ツール」、3Dデータを様々な部署の人たちとコラボレーションして使えるようにする「連携プラットフォーム」「開発環境」の大きく3つがあります(図2)。

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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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