
SAP ERPを利用している企業を悩ませていた「2025年問題」は、保守期限の延長で「2027年問題」として再び大きな課題となってる。その状況下で、今年の初めにSAPから発表されたのが「RISE with SAP」である。3月9日にプレス向けに開催された説明会では、ERPの現状をはじめ、「RISE with SAP」の詳細やI-PEX株式会社によるS/4 HANAへの移行事例などが語られた。
脱ホストの波から10年が経過

エンタープライズビジネス統括本部長 平石和丸氏
「RISE with SAP」がどのような形でDXへ貢献できるのかを説明する前に、ERP市場の現状について平石氏は、「ERP導入の引き合いは、この5年間で強くなっています」と説明を始めた。最初にERPの導入が増えたのは、2000年問題が取り沙汰されていたころだ。そのときは、“脱ホスト”を理由に導入の引き合いが増えていたが、ここ数年は異なる様相を呈しているという。
その大きな理由の1つが、DXの推進だ。多くの企業で最新テクノロジーを活用したビジネスの構築が議論されているが、DXのメリットを享受するためには、コアとなるバックオフィス業務の効率化や自動化などが必要だと考えるケースが増えているのだ。
また、2つ目の理由としてビジネスのグローバル化が挙げられた。特にここ数年は、20年前よりも海外展開を強める日本企業が増加している。そのため、既にERPを導入している企業であっても、グローバル化を機にSAPを選択するという機会が増えてきているという。他にも、新型コロナウイルス感染症の流行によって事業継続の観点からも導入が検討されるなど、従来とは導入を考える要因が大きく変化してきていると平石氏は述べた。

そのような状況下で導入実績を顕著に伸ばしているのが「SAP S/4 HANA」だ。既に16,000社超が導入している中で、約8,500社が稼働させているという。ここ3~4年のうちにERP構築を決めた企業一覧を図にしたものを例に挙げて、オンプレミスよりもクラウドでの引き合いが増えているだけでなく、製造業以外の業種からも多くの引き合いがあることを強調した。また、平石氏は「このクラウドこそ、『RISE with SAP』によって支援できる領域となってきます」と説明する。

SAPは、業務のプロセスにAIやIoTを組み込んだり、自社に閉じない形で基幹システムのビジネスネットワークを構築したりといった“ITを利用した生産性の高い世界”を目指す「インテリジェントエンタープライズ」という考え方を掲げている。この実現を支援するための施策こそが「RISE with SAP」であるという。
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
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