ゼロトラストとは攻撃者の力を削ぎ、私たちが優位に立てるものだ
−−どんなきっかけでセキュリティの仕事に就くようになりましたか?海軍では暗号技術者をしたとか。
長い話になるのですが短縮すると、最初海軍に入隊したのは17歳、メカニックとしてでした。ディーゼルエンジン船の整備をしていました。しかし徐々にコンピュータが得意だと分かり、23歳ごろからセキュリティの仕事が中心になりました。まさか自分がサイバーセキュリティに携わるとは思いませんでした。
−−ゼロトラストが台頭してきた背景について教えてください。
ゼロトラストのコンセプトは納得がいくものです。かつて私はいわゆるレッドチーム、わざとシステムを攻撃する(弱点を暴く)仕事をしたこともあります。ゼロトラストは、攻撃者が悪事を働くために行うあらゆることを取り除きます。学術的な分析視点からも合理的です。(ゼロトラストでやることは)攻撃者の力を削ぎ、防御側が攻撃者よりも優位に立てるようになるのです。
−−ゼロトラストに関わり始めたのはいつごろからですか?
フォレスターリサーチに入った2016年からです。いらいずっとゼロトラストに関わっています。
−−もともとインターネットはオープンなところから始まりました。徐々に重要なデータを抱える組織もインターネットに接続するようになり、まずは境界を作って防御するようになったものの、今では限界が露呈して違うものへと転換しているように見えます。
違いを明確にする必要があります。もはや焦点は所有するネットワークではなく、ユーザーの扱いになります。私たちがいかにリソースにアクセスし、インフラをどう制御するかです。これらを実現しようとするなら、組織の目標はより高度になり、やるべき範囲も広がります。
−−より高度な防衛で、攻撃されにくくするということですか?
攻撃者の視点で見る必要があります。彼らは皆と同じように仕事感覚でやっています。上司がいてコストも考えて動くこともあります。もし攻撃に時間やコストがかかるなら、より簡単ですぐに成果が出せるところを選びます。例えば泥棒が家に盗みに入るなら、ドーベルマンがいる家よりもチワワがいる家を選びますよね。
−−あるセキュリティ専門家がサイバー攻撃者を飢えた熊に例えていて「熊に食べられるのは、逃げる集団で一番最後にいる人だ」と話していました。
そうですね。最後尾だとやられますから、それより前を走らなくては。
−−ゼロトラストに関する活動でどんなことを達成したいとお考えでしたか?
私にとって重要だったのは、ゼロトラストの概念を技術的に適用可能にすることでした。(ゼロトラストを提唱した)ジョン・キンダーバグ氏は私がフォレスターリサーチに加わる前、10年ほどゼロトラストについて提唱し続けていました。私はとてもいいアイデアだと思い、実現するための方策を考えるようになりました。私の貢献で1000近くのベンダーが技術的にゼロトラストに適合できるようになったと思います。