2021年度の事業戦略とは
最初にマカフィー 代表取締役社長を務める田中辰夫氏が登壇し、セキュリティ業界を取り巻く環境の変化から語られた。昨年は、新型コロナウイルス感染症を背景に在宅勤務の導入が進んだことでクラウドサービスの利用が急増し、課題とされていたDXも加速。その一方で、サイバー犯罪者は新型コロナウイルス感染症に便乗した攻撃やクラウドサービス導入に追われたITセキュリティ部門の弱みにつけ込むような攻撃が観測されたとした。
これらを背景に同社では、クラウドセキュリティをけん引する「MVISION Cloud」を強化し、SASEを実現するための「MVISION Unified Cloud Edge(UCE)」を本格展開。本年4月には、「MVISION Cloud Native Application Protection Platform(CNAPP)」を一般提供している。また、「MVISION Extended Detection and Response(XDR)」で統合管理を強化するなど、コロナ禍でも売上げを伸ばし、ナスダック市場への再上場も果たした。
こうした動向を踏まえたうえで、田中氏はセキュリティ市場動向について「NEW WORKPLACE:新しい職場環境」「NEW ADVERSARIES:新たな脅威と敵」「NEW INNOVATION:新たなイノベーション」「NEW URGENCY:新たな緊急性」という4つの観点から説明する。
まず、“新しい職場環境”という点について、在宅勤務が進んだことにより「WebEX」や「Zoom」といったコラボレーションツールの利用が急増し、BYOD端末の数も倍増しているという。田中氏は、「今や様々な場所から業務を行い、セキュリティで保護されていないデバイスが企業のリソースにアクセスしています。今年の脅威予測でも触れた通り、家が職場になったことでコネクテッドデバイスも世界中で350億台が接続されることになり、リモートワーカーもパンデミック前と比較すると3~4倍になると予測されるなど、柔軟なセキュリティ対策が望まれるようになっています」と述べる。
また、“新たな脅威と敵”について、コロナ禍で攻撃者の関心が新たな手法に移っているとした。たとえば、クラウドネイティブな脅威について、昨年1月に最大630%の増加がみられたり、運輸や物流、教育業界の脅威も増加しているという。そのため、企業のセキュリティ担当者の負担も増大していると田中氏は指摘した。
さらに“新たなイノベーション”という点について、クラウドサービスの利用増加率が平均で50%増加し、コラボレーションツールの平均増加率も400%と急増。加えて、BYOD端末からの企業資産へのアクセスは2倍以上も増加するなど、これまでにないほどに多くの企業がイノベーションを推し進めているという。その一方で、攻撃者自身もイノベーションをとげることで、クラウドを中心とした脅威も増加している。
そして、“新たな緊急性”として、86%の企業が複数のサイバーセキュリティベンダーの製品を使用しており、インシデントを検出し封じ込めるまでに平均約9ヵ月という時間を費やしているなどの問題が指摘された。
これら4つの市場動向を受けてマカフィーでは、これまで提唱していたデバイスからクラウドまでの保護に加えて、本年度では将来までを見据えたセキュリティ運用の構築とすべての脅威経路における可視性などを提供し、“サイバーセキュリティのプラットフォーマー”として包括的な脅威防御とデータ保護の提供を目指すという。
まずはこの戦略を実現させるためにMVISIONを中核におきながら、すべての脅威経路における可視性と制御を実現するサイバーセキュリティを提供したうえで、クラウドに対するアプローチを加速。また、高度化する攻撃者に先んじるセキュリティ運用のためプロアクティブな防御を実現し、将来を見据えたSOC運用を可能にするとした。
これに加えて、先日発表されたSymphony Technology Group(STG)への法人部門売却についても触れられた。売却自体は今年末までに締結される見込みであるとし、エンタープライズビジネス部門はプライベートカンパニーとして、エンタープライズ領域に完全にフォーカスしていく形になるという。
田中氏は「今年も引き続き在宅勤務が推奨される事態となっているため、セキュリティ対策の意識も高まることが考えられます。セキュリティ業界にとってマイナス面だけではないため、今後もセキュリティ市場を成長させていきたいと考えています」と本年度の決意をみせた。