6月から新しい会計年度が始まった日本オラクルが、2022年度の事業戦略を説明した。2021年度を振り返れば、日本でも世界でも「Oracle Cloudの大きな広がりを残せた年だった」と言うのは、日本オラクル 執行役社長の三澤智光氏だ。「2022年度はミッションクリティカルの基幹系システムのクラウド化に注力、ハイパースケーラーの中でOracle CloudはGCPの後塵は拝していない」と語る。
Oracle Cloudは安くて速くてセキュア

昨年度の実績として真っ先に取りあげたのが、三井住友フィナンシャルグループのOracle Fusion Cloud ERPの事例だ。グループ会社を対象に共通の会計システムをOracleのSaaSで実装し、コスト構造の見える化でより踏み込んだコスト削減を実現。「非常にチャレンジングなプロジェクトで、私の知る限りこのような巨大金融グループの200に及ぶ関連会社を含めたシステムを共通化する事例はほとんど見たことがありません」と三澤氏。この大規模なプロジェクトでもピュアSaaSのOracle Cloud ERPが適用可能であることが市場で認知される、エポックメイキングな事例だと言う。
他にもNECがDXのために全社規模で活用するカスタマーデータプラットフォームをOracle Unityで実装、野村総研における金融向けのミッションクリティカルなサービスのシステム基盤にOracle Dedicated Region Cloud@Customerを採用、エディオンがオンプレミスの既存基幹系システムのクラウド化にOracle Cloudを選択したなどの事例を紹介した。
またオカムラがデータウェアハウス・アプライアンスをOracle Autonomous Data Warehouseに移行しレスポンスの向上とコストの削減を両立させた。オムロンはOracle Autonomous Data Warehouseを1ヶ月という短期間で導入しコスト削減を実現、また防災科学研究所ではリレーショナル、JSON、スペーシャル、グラフなどさまざまなファイルシステムをコンバージドデータベースで1つのインターフェイスで扱い、開発コストを大幅に抑えるといった事例も紹介された。これらもエポックメイキングな事例であり、Oracleの次世代のデータベースが着実に実績を上げた年だったと振り返る。
ISVについてもワークスアプリケーションズ、スーパーストリーム、ラクラス、Cybereasonなどとの取り組みが進み、各社がクラウドサービスの基盤にOCIを選択している。また社会を支える基盤としてもOracle Cloudが採用されている事例も報告された。さらにドイツ銀行とオーストラリア政府のAustralian Data Centresなど、グローバルでミッションクリティカルな基幹系システム領域でOracle Cloudの採用が進んでいる件にも触れ「世界中の金融機関の、本当のミッションクリティカルなシステムでOracle Cloud Infrastructure(OCI)のアーキテクチャが採用されるようになっています」と三澤氏は言う。
Oracle CloudのSaaSの顧客からは、費用対効果が高く短期間で導入できることが評価されている。これまでオンプレミスで利用されてきた基幹系のアプリケーションでは、アップグレードに大きな手間とコストがかかることが課題だった。OracleのピュアSaaSを選べば、アプリケーションのアップグレードからも、インフラの更改、運用管理からも解放される。これは「オンプレミスのアーキテクチャのアプリケーションをAWSなどに載せているだけのものとは、まるで違うものです」と主張する。
またOCIに関しては、ミッションクリティカル・システムのクラウド化ができる点が評価されていると言う。2018年に全く新しいクラウドとしてOCIは作り替えられており、古いクラウドに「増改築を続けたものではない」と三澤氏。作り替えたからこそ、安くて速くてセキュアだと言う。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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