課題は既存顧客のクラウド化に伴う満足度をいかに向上するか
社長に就任して7ヶ月、前会計年度の半分を指揮しOracle Cloudビジネスは好調だった。メディアなどではハイパースケーラーと呼ばれるクラウドベンダーがよく話題となり「AWSやAzure、GCPといった名前が出ますが、少なくとも日本市場でGCPに後塵を拝しているとの意識は全くありません」と三澤氏。AWSやAzureは古くから日本に根付いたクラウドで、素晴らしいサービスを提供しているのは事実だが、Oracleのクラウドも多くの日本企業で採用され、巨大なSaaS、IaaS、PaaSでのスーパー・ミッションクリティカルな事例がある。これらはOracleならではのもので、少なくともエンタープライズ市場ではOCI、OracleのSaaSがトップクラスだと言われるようになりたいと言う。
クラウドビジネスが概ね好調な中でも改善すべき点を訊ねると、顧客満足度を挙げた。オンプレミスでOracle製品を数多く採用している顧客1社1社を大切にし、より上手くOracle Cloudを活用してコストを削減してもらう。ここはまだまだだと言う。そのため今年度は、オンプレミス顧客にOracle Cloudのより良い使い方を提案することにフォーカスする。
またSaaS事業は極めて順調だったが「正直、日本のERP市場があまり面白くないと思っています。特に大型のERPと言うとS社(SAP)となっていますが、オルタナティブが上手くいってなかった。大型のERP、あるいはCRMを導入する際に、OracleのSaaSがオルタナティブとして存在し、そちらのほうが安くて速くて便利だと、もっともっと訴求していかなければと思っています」と三澤氏。
IaaS、PaaSについてもエポックメイキングな事例は増えたが、事例の数がまだ足りていない。そしてエコシステムもまだ弱い。「Oracle Cloud Infrastructureのインテグレーションが得意だと言ってもらえるパートナーは増えてはいますが、まだまだです。この辺りの充実を、いかに上手くやっていくか。それに、2022年度はより強く取り組みます」とも言う。
Oracle Support Rewardsの発表は、創業者でCTOのラリー・エリソン氏自らがグローバル発表した肝いりの施策だ。これは、既存のOracle製品のインストールベース顧客が、他に流出せずにOracle Cloudに確実に移行することが、Oracleにとっていかに重要かの表れでもあるだろう。目立つエポックメイキングな事例ではなく、既存顧客の移行事例の数がどれくらい積み上げられるか。今後はそれが、Oracle Cloudビジネスの評価となるだろう。