COBITの成熟度モデルがヒントになる
では、どう成熟度を高めていけばいいのでしょうか。1つのヒントは、汎用的なITガバナンスのフレームワークであるCOBIT[※3]で提供される成熟度モデルです。このCOBITのフレームは、ITILのITガバナンスと結び付けて、使っているケースも多いと聞きます。私もITILへの興味から知りました。主にマーケティングのターゲット分析をするときにこのモデルを使っています。
COBITでは次のように6段階からなる成熟度モデルが定義されており、IT管理プロセスがどれだけ適切に定義され、運営されているかを測定する手段としています。組織がどの成熟度に分布されていて、次にいくために足りない部分があるとしたらそれはどこの問題で、どのような対策が必要か、といった事項を客観的に見て、成熟度を上げる作戦を練ることができます。今、人事で話題の職能制度のジョブの定義も同じようなコンセプトです。成熟度の航海図みたいなものでしょうかね。
0:存在しない
認識可能なプロセスが存在していない。対処すべき問題の存在が認識されたことがない。
1.初期
問題の存在と対処の必要性は認識されているが、標準化されたプロセスはなく、事例ごとに場当たり的な手法が用いられる傾向にある。
2.反復可能
同じ仕事を別の人が行っても、同様の手順で行われる程度のプロセスは存在する。しかし、標準化された手順を訓練及び伝達する正式な方法がないため、誤りが生じやすい。
3.定義済み
手順が標準化および文書化され、トレーニングを通じて伝達されている。しかし、標準化された手順に従うかどうかは個々の人員に任されており、定義されたとおりでないことが発生しても発見しにくい。
4.管理可能
手順の順守度を監視及び計測することができ、プロセスの有効性が疑われる場合には対策をとることができる。プロセスは常に改良が加えられ、良好なプロセスへとつながる。自動化及び各種管理ツールは部分的に使用されている。
5.最適化
継続して改良を行い、他部門と連携して成熟モデルを適用してきた結果として、プロセスは十分に寝られていてベストプラクティスの域に達している。IT部門は統合的に活用されてワークフローの自動化を実現し、品質と友好性を向上させるツールを提供しているので、適応性は高い。
デジタル、データサイエンス、データ管理など自身の企業で必要なスキルを特定して、その成熟度をCOBITと同じように、5段階のレベルなどで定義します。そして、現在の人財をそれぞれ評価して、成熟度レベルにマップするのです。その結果、組織をマップしてもいいかもしれません。
さらに、次にどのような分布にしたいかの戦略を立て、どのように成熟度を上げるかを計画します。その中には、各種のトレーニングもありますが、外部からの採用という方法もあります。データサイエンスのように、理論が要求されるような分野で、社会人になってから習得が難しいスキルがあります。
組織の成熟度は一飛びには上がりません。人材の分布が大きい(人口が大きい)成熟度レベルを上げるというのがよい戦術かもしれません。それによって、全体の成熟度が高まります。ただ、ビジネスに差別化を生むような最新トレンドを追うためには、高い成熟度を組織にどうもたせるかの戦術もとても重要になります。
もう1つ重要なことが企業文化です。組織全体で常に成熟度を上げていくことを、ラーニングカルチャーとして植え付けていく必要性があります。勝手には個人はそれほど勉強しません。書籍「デザイン思考が世界を変える: イノベーションを導く新しい考え方」(ティム・ブラウン著 早川書房)を読んでなるほどと思ったのは、豊かな土壌でないと草木が育たないように、豊かな企業文化がないと人は育たないということです。