最近のEnterpriseZineの記事をみても、現在、DXの話題に事欠きません。このようなトレンドが起こり、デジタルについて議論をすることはとても良いことだと思います。ただ、ビッグデータ、データサイエンティストなど、過去に同じようなトレンドを見てきて、改めて現状を俯瞰すると日本のITの課題が見えてきます。これらのトレンドは基本的に進化であり、突然変異ではありません。進化というのは、何か進化前の基盤があります。日本の場合は、その基盤が弱いので、進化だけをみて、取り組み方法が分からない、当社には関係ないという話になるのだと思います。
たとえば、ビッグデータのトレンドは、統計、データマイニング、時系列分析、機械学習といったデータサイエンスの進化の先にあります。同じようにデータサイエンティストのトレンドは、欧米では企業の中にアナリストという職種が長年あり、その進化でビジネス課題をデータサイエンスとITで解決する役割として登場しました。1993年にマイクロソフト社に入社したのですが、当時から普通にアナリストが日本オフィスにもいました。同じようにDXも、デジタルを使った業務の最適化の進化として、デジタルによる業務のトランスフォーメーションがあるのです。
要するに、日本は相対的、絶対的に、進化の基盤部分が弱いため、進化だけが話題になり、右往左往するのです。DXにしても、デジタル最適化が成熟していないので、そらいきなりDXにならないでしょと思います。ベンダー側もこのあたりを正しく理解できていないので、何でもDXに結びつけて宣伝している傾向があり、混乱へ拍車をかけています。メディアもそうかな。すなわち成熟度をきちっと上げていかないと、次の進化はないと思います。音楽でも、スポーツでも、基礎の上に応用があるのと同じです。逆に、備えておえば、新しいトレンドが来てもへっちゃらです。
「私は、やっぱりICTという言葉が好きではありません。 日本は、デジタル落第国から脱却できるのか?」の記事で記載しましたが、日本は2020年時点ではデジタルの競争力が世界27位です。
ログデータ解析ソフトウェアベンダー Splunk Services Japan [※1]の調査では、日本は主要7ヶ国の中で最もデータ成熟度が低いと結果がでています。
Advanced Analyticsも、マッキンゼーの調査[※2]をみると、これはアジアの中の認知度合いですが、下から数えたほうが早い状況です。
これらの成熟度の低い原因の1つは、大学教育にあると思います。最近こそデータサイエンスの学部が滋賀大学などに出来てきていますが、米国では主要な大学では統計学部が必ずあります。ソフトウェアについてもそうです。ソフトウェア開発者、アナリストなどの職種が大手の企業ではない。よって、大学でもその関連する学部がない。学部がないから、基礎をもった人が社会に排出されないという、悪循環が国内で続いています。大学の取り組みについては、残念ながら時間がかかります。