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北川裕康のエンタープライズIT意見帳

私は、やっぱりICTという言葉が好きではありません。 日本は、デジタル落第国から脱却できるのか?


 6年前に、「私はICTという言葉が好きではありません」と書き反発も受けたという著者。デジタル庁の設立が話題になるように、ITの代わりに“デジタル”を使うようになった現在は状況はどう変わったのでしょうか。33年以上にわたりB2BのITビジネスにかかわり、現在はクラウドERPベンダーのインフォア(Infor)のマーケティング本部長の北川裕康氏が本音と洞察で業界動向を掘る連載。

 6年前に、他のメディアで、「私はICTという言葉が好きではありません」という記事を書き、多くの反響をいただきました。大半は、賛同いただく声でしたが、中には、特に教育関係の方は、強い反発をされていました。当時の私の主張は、以下のようなことです。

  • 情報技術には通信の技術が包含されているので、わざわざCommunicationのCをつける必要がない。インターネット、IoT、クラウド、モバイルなどなど、通信技術なくして、ITはありえません。
     
  • 国際的にも、ICTを使っている企業や団体は少ない。日本でも、ICTを会社と宣伝しているに関わらず、個人では「ICT会社の社員です」と、自分を紹介する人は少ないですよね。きっと「IT会社に務めている」と言うと想像します。
     
  • 日本は、古い昔、NECの標語であったC&C: Computer&CommunicationというアイデアがICTの原点のような気がしますが、ComputerだけがITに進化したわけでないです。このComputerの姿もCisco SystemsのUCSを見られるような、ネットワークを基盤に、プロセッサ、ストレージなどが統合された疎結合のアーキテクチャに変わってきており、コンピューティングとネットワーク融合している。
     
  • 情報の価値そのものが重要になっている。AIや機械学習が今ほど発展していませんでしたが、ひと、もの、金に続く、資産としてデータが浮上していました。

 ご興味あれば、ぜひインターネットで検索して、その記事をご覧ください。

 6年たった今、デジタル庁の設立が話題になるように、ITの代わりに“デジタル”を使うように変わってきています。海外では、Digital Transformation(DX)、Digital Disputationに代表されるように、ITという言葉も最近見なくなってきています。ただ、部門名としてITは、グローバル企業でも根強く残っています。ITと言うと大概がIT部門のことを指しますね。ICTの擁護派の皆さん、まさかDigital & Communicationなんか言わないですよね?

 しかし、私が勤めていたDECについては、その先見の明に感心します。先見の“名”といいましょうか、DECはDigital Equipment Corporationの略で、そのロゴはDigitalでした。同じDECでも、装置であるEquipmentが進化であるEvolutionだったら、現在にも通用していたのかもしれません。

 言葉遊びもこのくらいにしたいと思います。IT、ICT、デジタル、どのような言葉を使おうが、別の言葉を使おうが、きちっとそのインパクトを見極め、企業や組織で適切に適応することはとても大事です。適応しなければ、他社や他国が実行して、破壊的なインパクトを与えるかもしれません。

 最近、日本の現状を、デジタル敗戦国と表現する人がいます。もっと強い言葉でいう方は、デジタル戦争に参戦すらしていないと。マッキンゼー社のレポート「2030年に向けた日本のデジタル改革」では下記のように述べています。[※1]

「日本はデジタル面の競争力が比較的低く、意外なことに日本経済の強さとは対照的である。2020年時点ではデジタルの競争力が世界27位、デジタル人材の充実度が同22位となっており、電子商取引、モバイルバンキング、デジタル行政サービスといった分野の普及率は一桁台に留まっている。世界に500社以上存在するユニコーン企業 (設立10年以内で企業価値10億ドル以上の企業) のうち、日本企業はわずか5社に過ぎず、日本の総体的な国力からするとあまりに少ない。」

 競争力たるや、なんと27位! 多くの課題があるのは確かです。このレポートには、日本のデジタル通信簿なるものがあるので、ぜひご覧ください。日本は通信簿としては落第ものです。

[※1] マッキンゼー「2030年に向けた日本のデジタル改革」
 

次のページ
日本のお家芸としての言葉遊び

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この記事の著者

北川裕康(キタガワヒロヤス)

35年以上にわたり B2BのITビジネスにかかわり、マイクロソフト、シスコシステムズ、SAS Institute、Workday、Inforなどのグローバル企業で、マーケティング、戦略&オペレーションなどで執行役員などの要職を歴任。現職は、クラウドERPベンダーのIFSでマーケティングディレクター。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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