6年前に、他のメディアで、「私はICTという言葉が好きではありません」という記事を書き、多くの反響をいただきました。大半は、賛同いただく声でしたが、中には、特に教育関係の方は、強い反発をされていました。当時の私の主張は、以下のようなことです。
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情報技術には通信の技術が包含されているので、わざわざCommunicationのCをつける必要がない。インターネット、IoT、クラウド、モバイルなどなど、通信技術なくして、ITはありえません。
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国際的にも、ICTを使っている企業や団体は少ない。日本でも、ICTを会社と宣伝しているに関わらず、個人では「ICT会社の社員です」と、自分を紹介する人は少ないですよね。きっと「IT会社に務めている」と言うと想像します。
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日本は、古い昔、NECの標語であったC&C: Computer&CommunicationというアイデアがICTの原点のような気がしますが、ComputerだけがITに進化したわけでないです。このComputerの姿もCisco SystemsのUCSを見られるような、ネットワークを基盤に、プロセッサ、ストレージなどが統合された疎結合のアーキテクチャに変わってきており、コンピューティングとネットワーク融合している。
- 情報の価値そのものが重要になっている。AIや機械学習が今ほど発展していませんでしたが、ひと、もの、金に続く、資産としてデータが浮上していました。
ご興味あれば、ぜひインターネットで検索して、その記事をご覧ください。
6年たった今、デジタル庁の設立が話題になるように、ITの代わりに“デジタル”を使うように変わってきています。海外では、Digital Transformation(DX)、Digital Disputationに代表されるように、ITという言葉も最近見なくなってきています。ただ、部門名としてITは、グローバル企業でも根強く残っています。ITと言うと大概がIT部門のことを指しますね。ICTの擁護派の皆さん、まさかDigital & Communicationなんか言わないですよね?
しかし、私が勤めていたDECについては、その先見の明に感心します。先見の“名”といいましょうか、DECはDigital Equipment Corporationの略で、そのロゴはDigitalでした。同じDECでも、装置であるEquipmentが進化であるEvolutionだったら、現在にも通用していたのかもしれません。
言葉遊びもこのくらいにしたいと思います。IT、ICT、デジタル、どのような言葉を使おうが、別の言葉を使おうが、きちっとそのインパクトを見極め、企業や組織で適切に適応することはとても大事です。適応しなければ、他社や他国が実行して、破壊的なインパクトを与えるかもしれません。
最近、日本の現状を、デジタル敗戦国と表現する人がいます。もっと強い言葉でいう方は、デジタル戦争に参戦すらしていないと。マッキンゼー社のレポート「2030年に向けた日本のデジタル改革」では下記のように述べています。[※1]
「日本はデジタル面の競争力が比較的低く、意外なことに日本経済の強さとは対照的である。2020年時点ではデジタルの競争力が世界27位、デジタル人材の充実度が同22位となっており、電子商取引、モバイルバンキング、デジタル行政サービスといった分野の普及率は一桁台に留まっている。世界に500社以上存在するユニコーン企業 (設立10年以内で企業価値10億ドル以上の企業) のうち、日本企業はわずか5社に過ぎず、日本の総体的な国力からするとあまりに少ない。」
競争力たるや、なんと27位! 多くの課題があるのは確かです。このレポートには、日本のデジタル通信簿なるものがあるので、ぜひご覧ください。日本は通信簿としては落第ものです。
[※1] マッキンゼー「2030年に向けた日本のデジタル改革」