「スマートシティ」や「Society 5.0」と未来都市の夢は膨らむものの、実物はまだ多くが開発中だ。DXというと主に企業におけるデジタル改革を指すが、これを「まち(街)」に拡張したものとイメージしてもいいだろう。道具となるテクノロジーも、普及しているツールやガジェットも、時代やまちが抱える課題も常に流動している。受託開発のSIから事業会社へと転身し、スマートシティの実現に奔走する三井不動産の黒川悟史さんに、これまでのキャリアから現在手がけている柏の葉スマートシティの現状についておうかがいした。
分子生物学からSI、自動車業界へ

三井不動産が手掛ける街の一つに柏の葉スマートシティがある。環境共生、健康長寿、新産業創造をテーマに掲げ、公・民・学にて街づくりに関する様々な取り組みが行われている。
その取り組みの1つに柏の葉データプラットフォームプロジェクトがある。これは個人同意のもとで事業者間にてデータを連携し、事業の枠を越えて生活者に新しい価値を提供するサービスの創出や、研究活動の促進等を目的として、三井不動産が多くの企業等と協力し推進している取り組みだ。本稿ではこの柏の葉データプラットフォームプロジェクトにてシステム開発を担当している三井不動産 黒川悟史さんのこれまでの軌跡を追ってみよう。
元々は分子生物学を専攻し、大学院では創薬の研究をしていた黒川さん。学生時代のITスキルは「ワードやパワポぐらいしか使えない」レベルだったが、IT業界が盛り上がっているのを横目で見て「チャレンジしたい」と一念発起。まずはSIに入社した。
SIでシステム開発に携わりながら、目線は上流へと向く。「自分で社会にインパクトのあるシステムの企画を立てられるようになりたい」と、自動車メーカーに転職。今でこそ自動車業界は「つながるクルマ」や自動運転などデジタル化が急速に進んでいるが、黒川さんが転職したのはまだその兆しの段階だった。
自動車メーカーでグローバルなデジタル戦略策定やデータ基盤開発を経験していくうちに、黒川さんの関心は街へと広がり、三井不動産へと転職する。黒川さんは「あくまでも私が感じたことですが、モノとしての視点でクルマは5〜10年で買い換えます。一方、街づくりには終わりがありません。そして街にはクルマを含むあらゆる要素があって面白そうだと思いました」と話す。黒川さんの視野と時間幅はシステム単位のSIから、多様なシステムを搭載したクルマへ、そしてあらゆるものを包含し終わりのない街づくりへ。
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加山 恵美(カヤマ エミ)
EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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