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ITCAは電子インボイス導入をどう見るか 散見される課題も指摘

「中小企業共通EDI」で見据える“だれもが使いやすい”仕組みとは

 電子インボイス推進協議会の発足やデジタル庁創設など、電子インボイスを取り巻く環境が活発化している。その一方で、EDIによる商取引の電子化は長きにわたり試みられており、その一翼を担っているのがITコーディネータ協会だ。「中小企業共通EDI」の策定など、ITによって企業間取引を円滑にするべく取り組んできた同協会は、今回の電子インボイス導入に関わる一連の動きをどのように見ているのだろうか。

なぜITCAは「中小企業共通EDI」を推進するのか

 1996年6月に通商産業省(現、経済産業省)における産業構造審議会情報産業部会 情報化人材対策小委員会の中間報告において「戦略的情報化投資活性化のための環境整備の試み」[※1]が提唱されたことに端を発し、2000年10月にNPO法人として設立されたのがITコーディネータ協会(以下、ITCA)だ。発足から21年目を迎える現在では、下記4つを柱に活動している。

  1. ITコーディネータの育成事業
  2. ITコーディネータの資格認定事業
  3. 情報化投資に関する研究開発事業
  4. 情報化投資に関する普及・啓蒙活動

 その中でも、同協会が2009年頃から積極的に取り組んでいる活動の1つとして「中小企業共通EDI(Electronic Data Interchange)」が挙げられる。この中小企業共通EDIは、従来の中小企業における受発注業務の課題解決に向けて取り組まれている事業の1つである。たとえば、発注データを業務アプリケーションへ入力した後に、紙で出力してFAXで送信。受信者も紙からデータを起こしなおすといった、部分的なデジタル化に留まっているために、紙を中心とした世界から脱却できていないようなケースだ。

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 ITCA 共通EDI事務局 研究員を務める野田和巳氏は、「ICT(Information and Communication Technology)における“Communication”をまったく使えていない状態です。これは、日本全体でみたときに莫大な損失といえます。日本の競争力や労働生産性が低下していると指摘されていますが、まさにこういった状況も影響しているのではないでしょうか」と述べる。

 もちろん、こうした課題を解消するためにもEDI[※2]は提唱されているが、まだまだ普及に至るまで道半ばといえる。その最大の原因となっているのがサーバー導入や業務システムの改修といったコストだ。特に、発注業務についてはコスト負担も重いために大企業に指定されて、特定企業のみとしかやり取りできない、いわゆる「個別EDI」を使用するような状況が発生してしまっている。この解決に向けて中核企業によって業界のスタンダードするための「業界標準EDI」も策定はされたが、依然として各業種業界に閉じたままだという。

ITCA 共通EDI事務局 研究員 野田和巳氏
ITCA 共通EDI事務局 研究員 野田和巳氏

 また、インターネットの普及とともに「Web-EDI」も登場したが「多画面問題」[※3]などもあり抜本的な解決には至らなかった。野田氏は、受注者がサーバーをもたなくても済むため安価で画期的な方法と考えられましたが、発注者毎に形式もバラバラのままでした。そのため、企業によっては何十社分のWeb-EDIにログインをして…と非常に手間がかかってしまいます。つまり、個別EDIの状態と同じことがおきてしまったのです。また、自動化をしようにも発注者毎の変換の仕組みを構築するためにはコストが膨大になるため、従来のようにFAXでやり取りする方が楽だという結論に至ってしまう中小企業も少なくありません」と語る。

 そこで中小企業庁「次世代企業間データ連携調査事業」が実施され、その効果が十分であるとの検証を経た後にITCAから『中小企業共通EDI標準(初版)』(PDF)が2018年3月に公開されることとなった。大きな特徴としては、前述したような個別EDIや業界標準EDIのもつデメリットを解消するため、中小企業が既存の業務システムに大幅な改修をいれなくてもつなぎ込むことができるよう、EDIの国際標準でもある「国連CEFACT」に準拠した仕様を策定したことだ。また、サーバー構築を不要とするために「共通EDIプロバイダ(ESP)サービス」[※4]をクラウドで提供している。このESPサービスを通してやり取りを行うことで、電子帳簿保存法に対応したEDIデータ保存サービスやファイル添付機能、相手方指定様式の帳票を印刷する機能なども利用することができるという。

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 「最終的には、企業規模や立場に関係なく全員が使いやすくなるための仕組みとして、『中小企業受発注ネットワーク(共通EDIプラットフォーム)』構築を目指しています。そのために『中小企業共通EDI認証制度』も設けており、各ベンダーの製品・サービスがつながるとともに、大企業が中小企業共通EDI標準に則った形で中小企業と取引きを行うことを推進しているのです」(野田氏)

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[※1] 経済産業省『産業構造審議会情報産業部会「情報化人材対策小委員会」中間報告』(PDF)

[※2] 「企業と企業の間で商取引を行うときに、必要な書類のやり取りをコンピュータ同士をネットワークでつないで電子的に処理すること」(日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)ホームページ、用語集より

[※3] 参考:中小企業庁『平成28年度 経営力向上・IT基盤整備支援事業(次世代企業間データ連携調査事業)調査報告書』(PDF)より、「1.3.1. 国内の企業間データ連携の問題」

[※4] 「企業間で取引情報をインターネット経由で交換するための仕組み・サービス」(ITCAホームページ「共通EDI対応製品・サービスの認証制度について」より)

次のページ
電子インボイスを見据えたITCAの役割とは

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この記事の著者

岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)

1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/14876 2021/09/21 09:00

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