調査会社のガートナー社、グローバルでは社員が16,000名以上いて、売上が41億ドル(4,000億円以上)もあります。かなり大きな企業です。ITに関わる調査、コンサルティング、カンファレンスなどを提供しており、テクノロジーだけでなく、業種ごとのアナリストがいたりします。私は、長年ガートナージャパンの方にお世話になっています。教育サービスも提供しているので、以前、営業教育を受けたこともあります。
なんといっても、マジック・クアドラント、ハイプ・サイクルが有名ですね。これらは、ガートナー社が提供している特定分野のベンダーの評価や、特定分野のテクノロジの採用における状況を分析したものです。皆様も一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
マジック・クアドラントは、特定市場におけるテクノロジ・プロバイダーを位置づけするもので、競合しているのはどのプレイヤーかを理解することができ、導入選定の参考にされます。各社のパフォーマンスを、2つの軸(実行能力、ビジョンの実効性)で評価して、「リーダー」、「概念先行型」、「特定市場指向型」、「チャレンジャー」に分類します。ベンダーがよく、「うちはマジック・クアドラントのリーダーです!」と宣伝します。あっ当社もだ(笑)。
ハイプ・サイクルは、特定のテクノロジーを分析した上で知見を引き出し、今後5~10年にわたって高度な競争優位性をもたらす可能性が高い、押さえておくべき先進的なテクノロジーおよびトレンドを、簡潔にまとめたものです。黎明期、「過度の期待」のピーク時期、幻滅期、啓蒙期を経て、生産性の安定期になります。ハイプは、誇大宣伝の意味で、「過度の期待」があるから、このような名前になっているのだと想像します。幻滅期は、ジェフリー・ムーア氏のキャズム=深い崖のコンセプトに近いですね。幻滅期が深い崖で、普及のためには、それを乗り越え普及するイメージでしょうか。今後、押さえるべきテクノロジーを考える上ではとても参考になります(ところがなぜか、2021年のハイプ・サイクル[※1]では幻滅期のテクノロジーが表記されなくなりました)。
その他、市場調査が中心ですが、IDC Corporationも有名で、日本にはIDC Japanがあります。昔、日本にもあった「Windows NT World」などを発行していた出版やイベント運営のIDG社は、今はIDC社の親会社です。そして、IDG社は投資会社のBlackstone社に買収されています。投資会社の一部になったので、規模は公表されていませんが、IDG社も、ガートナー社に匹敵するようなそれなりの規模だと思います。なお、IDGのメディアについては現在でも続いており、「Computerworld」などの記事が時々、日経BPから出ていたります。
他にも、大手調査会社のフォレスター・リサーチ(Forrester Research)社、コンステレーション・リサーチ(Constellation Research)社なども有名です。また、日本には、IT系の調査会社としては、ITR、富士総研、富士キメラなどがあり、国内のIT市場の調査には定評があるようです。
ところがなぜか、これらのアナリスト系の会社は、日本では相対的に存在感が薄いですね。ガートナーは日本でも早い成長をしていると聞きますが。アナリストというと、日本では金融・証券市場の方が一般的ではないでしょうか。テレビでもコメンテータとして証券アナリストはよく見ますが、ITのアナリストを見ることは稀です。日本でITの話題となると、よく知らない人が専門家としてテレビでコメントしているので、いつも私は大きな違和感をもちます。