ボトルネックになっているP2Pプロセス
デジタル化と世界的な半導体不足に加え、東南アジアの感染拡大に伴う部品供給問題の影響で、自動車産業に逆風が吹いている。他の産業でも、部品調達難や納期遅れなどが懸念されており、日本企業にとって、「サプライチェーンの強靭化」は対応を急ぐべき新しい課題として浮上している。
2006年に米サンマテオで設立されたCoupa Software(以降、Coupa)は、自社が提供するソリューション領域をBSM(Business Spend Management)と称している。製品はSaaSで提供しており、同社は年に3回のメジャーリリースにコミットしている。新機能の数は年平均で300以上。その恩恵を得て、顧客は常に最新の機能を使える。業種を問わず、グローバルで2,000社以上の企業を顧客に抱えており、その企業の取引先であるサプライヤー700万社も間接的にCoupaを利用している。Coupaではユーザーの取引データを蓄積しており、その金額は2.8兆ドルを超える。国境を超えて、一つの大きな調達経済圏が形成され、今日も拡大を続けているわけだ。
日本市場進出は2018年だが、2021年4月にジャパンクラウドとの戦略的パートナーシップを締結し、Coupa株式会社を設立。再スタートを切った。2021年4月に日本法人の社長に就任した小関氏は、Coupa製品の根幹を成す考え方を「Value as a Service(お客様に定量的な価値をサービスとして届けること)」と説明する。実際、同社は多くの導入企業の価値創出をサポートしてきた。例えば、「発注処理の電子化率」のようなデジタル化に関するものから、全体支出の可視化、購買プロセスの効率性、ガバナンスに関するものまで、様々なKPIを改善した実績を持つ。さらに、蓄積したデータを使い、自社の現状把握だけでなく、同業種のトップ企業群のデータと比較しながら改善を進めることもできる。
そのCoupaが焦点を当てているプロセスは、S2P(Source to Pay)と呼ばれる「ソーシング/見積」から「支払実績」に至る一連の流れである。このS2Pは、「ソーシング/見積」「契約」から成るS2C(Source to Contact)プロセスと、P2P(Procure to Pay)プロセスに分解できる。S2Cは自社の戦略に合致するサプライヤーを探索し、契約するまでであるが、負担が大きいのは繰り返しの多いP2Pの方だ。
企業がサプライヤーに見積りを依頼し、諸条件を確認してから発注する。注文した商品が手元に届くと、検収を行い、問題がなければ支払い処理に進む。コロナ禍に見舞われる前は、紙でのやり取りが当たり前であったはずだ。しかも、この事務作業は発注側だけが行うものではない。サプライヤー側も注文書をもらって、商品を納品してから請求に至るまで同じような事務作業を負担しなくてはならない。「本来はソーシング戦略の策定と検証に多くのリソースを投じるべきだが、P2Pプロセスを効率的に実行できていないことが多くの企業の足かせになっている」と小関氏は指摘した。(図1)。