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データマネジメント組織を作るための8原則とは?『DXを成功に導くデータマネジメント』から一部紹介

 DXを成功させるには、企業の第4の資産であるデータの価値向上と活用が欠かせません。そのために必要とされるのがデータマネジメント組織。うまく機能する組織を作る8原則の一部を、データ総研の小川康二さんと伊藤洋一さんがまとめた『DXを成功に導くデータマネジメント』から抜粋して紹介します。

本記事は『DXを成功に導くデータマネジメント データ資産価値向上と問題解決のための実務プロセス75』の「第2章 成功するデータマネジメント組織づくりの8原則」から一部を抜粋したものです。掲載にあたって編集しています。

原則1 データを資産として扱う

資産とは何か?

 資産とは、会計上の説明では貨幣に換算できるもので、将来に亘って企業に収益をもたらすことが期待される価値のことをいいますが、本書では、価値を生み出す潜在的な能力をもっている経営資源と定義します。

 ここでいう価値とは、経営資源を活用することで得られる利益です。ある経営資源を活用した施策の結果「キャッシュフローを生み出す」、「コストを抑える」、「売上を伸ばす」、「新商品を生み出す」、「顧客のニーズに応える」といったことを実現でき、それを通じて直接的・間接的に利益が生まれるのであれば、その経営資源には価値があるといえます。

データは第4の資産

 経営において、ヒト・モノ・カネは資産として当たり前のように考えられています。加えてDX時代においては、データも資産として認識すべきです。データが生み出せる価値とは、意思決定や戦略を補佐し、新しいインサイトを得られるところにあります。

 しかし、データに限らずですが、資産をもっているだけでは価値は生まれません。このことを、改めて認識するべきです。例えば、ヒトという経営資源は、「仕事」をすることで組織に価値を提供し、カネは「投資」されて初めて価値貢献します。それと同じように、データはヒトが「分析」して初めて意味のあるインサイト(洞察、潜在ニーズなど)を得ることができるのです。

資産として維持するにはガバナンスとマネジメントが必要

 資産の価値を保ち、向上させるためには、ガバナンスを利かせて、マネジメントを行う必要があります(図2.4.1)。

図2.4.1 データを資産として扱うイメージ
図2.4.1 データを資産として扱うイメージ

 データにおいては、データを生み出した責任者でもある「所有者=データオーナー」を明らかにして、データの価値を保ち、向上させるように責任をもってマネジメントしてもらう必要があります。

 いくら口で「データを資産として扱っている」と言っても、データの所有者がはっきりしておらず、マネジメントされていなければ、そのデータは価値が保証されていない値の羅列に過ぎないのです。

 つまり、単なる資源かもしれないし、資産かもしれないということです。もしかしたらダークデータに代表されるような負債ということもありえます。データを資産として扱うためには、遠回りに見えるかもしれませんが、データガバナンスを利かせて、データマネジメントに取り組むしかありません。

原則2 ガバナンスとマネジメントを分離する

ガバナンスとマネジメントは違う?

 データガバナンスは、データマネジメントの実行を監督・サポートするものであり、データマネジメントそのものではありません

 統治するためのフレームワークを定めることがデータガバナンスの役割で、現場で日々発生するデータを管理するのがデータマネジメントの役割です。後述のコラムにガバナンスの語源と参考文献を紹介していますが、統治は人に対して使う言葉、マネジメントは財産に対して使う言葉です。それぞれ見ている対象が異なる点に着目すると見通しが良くなると思います。

データガバナンスは委員会方式

 データは組織横断で利用して初めて価値を創出するため、データガバナンスを推進するには、特定の組織や部門が担当するよりも、各事業部門や業務部門の責任者を集めて、チーフデータオフィサー(CDO)が調整役やファシリテーション役としてリードする委員会方式をとります。

 委員会には他にも青写真が描けるチーフデータアーキテクト(CDA)や情報システム部門の最高責任者でもあるチーフインフォメーションオフィサー(CIO)にも参画してもらい、将来構造の実現可能性を描いていきます。

EDMとPDCA

 データガバナンス活動とは、EDMを循環させることです。EDMとは、E:Evaluate(評価)、D:Direction(方向付け)、M:Monitor(モニタリング)を表します。

 Evaluateは、データマネジメント施策に基づく投資対効果を評価し、効果があれば追加投資を行い、効果がなければ施策を変える、やめるといった判断をする機能です。Directionは、データマネジメント施策に基づいて、データマネジメント推進リーダーの方向付けを行う機能です。Monitorは、データマネジメント施策が達成されているかモニタリングする機能です。

 データマネジメント活動とは、PDCAを循環させることです。PDCAとは、P:Plan(計画)、D:Do(実行)、C:Check(チェック)、A:Act(改善)を表します。

 Planは、データガバナンスからの方向付けに基づいて、データマネジメント施策の実行計画を立てて、体制・役割を具体化する機能です。Do は、データマネジメント施策に基づいて、データ活用基盤の構築・維持が行われるように技術支援・レビュ・教育を提供する機能です。Checkは、データ活用者がデータ活用基盤をより良く利用できるように、データマネジメント施策の範囲内でサポート(例えばデータ辞書の提供)する機能です。Actは、データマネジメント施策に基づいて、データ活用基盤が問題なく構築・維持・運用されているか評価・改善し、ガバナンスへ報告する機能です。

 EDMは経営視点で循環させ、PDCAは現場を育てる視点で循環させます。それぞれ目的をもって独立して循環させることで、組織全体が循環し、文化が醸成され、データ駆動型経営の実現に近づいていきます。

図2.5.1 ガバナンスとマネジメントの分離のイメージ
図2.5.1 ガバナンスとマネジメントの分離のイメージ

原則7 対象領域を絞ったスモールスタートで始める

スモールスタートで戦略的に広げる

 データマネジメントを始めると、意外とやることが多いことに気付くと思います。そうなってしまう理由は、データマネジメントの経験がない中で、DMBOK2をベースに一通りやろうと考えているからです。ただし、仕方ない部分もあります。現場としては、どのデータマネジメント施策を最優先に行えば良いか、なかなか判断が難しいのが本音のようです。

 幅広く始めるとビジネスサイドから「何のために行うのか」と問われ、一向に進まなくなることもあります。また多くの部門を相手にすることになり、人的リソースが足りず、辛い思いをしながら進めることになるかもしれません。反発を受けて、企業全体でデータマネジメントに対するアレルギーを招く恐れもあります。

 そこで、まずは短期的に効果を得られやすいマーケティング関連に絞って、顧客データの統合、商品データの統合、法規制への対応から着手し、企業全体に成功体験をつくることから始めるのが良いでしょう。成功体験が得られることで、ビジネスサイドに必要性が理解され、横展開がやりやすくなります。

Point! スモールスタートの本当のねらい

スモールスタートのねらいは、仕組みをつくることです。施策は何でも良いので、まずは一通りガバナンス・マネジメントのプロセスを回し、回していく中で足りない施策を拡充させるという考え方にもっていくのがベストです。最低限の体制・プロセス・ルール・基盤をつくって回してみましょう!

図2.10.1 スモールスタートのイメージ
図2.10.1 スモールスタートのイメージ

ガバナンスとは

 ガバナンスの歴史的起源は、ラテン語のgubernareで「船を操舵する」という先導の意味があるようです。文献では「統治」という言葉を使っているので、「統制」は使わないほうが良いかもしれません。

 ガバメントとガバナンスはもともと同義だったようですが、ガバメントは国の統治、ガバナンスはそれ以外で使うようになったそうです。ガバナンスについて詳しく知りたい方は、以下の文献をお薦めします。

  • なぜ「ガバナンス」が問題なのか? 政治思想史の観点から, 宇野重規, 東京大学社会科学研究所
  • ガバナンスを問い直す[Ⅰ], 大沢真理/佐藤岩夫, 東京大学社会科学研究所
  • ガバナンスとは何か マーク・べビア, NTT出版

原則8 データマネジメント活動もサービスとして考える

ビジネスサイドに良質なデータを提供するのがサービス

 すべての企業がサービスプロバイダーの方向に進むということは、企業に所属するすべての構成員がサービス指向になるということです。顧客のタッチポイントを考える営業やマーケティングだけでなく、企業内のやり取りもすべてサービスとして捉えます。

 データマネジメントはビジネスサイドでビジネス施策を仮説構築できるように、必要なデータをスピーディーに提供することがサービスとして求められます。

Point! データ提供のサービスを考える視点

次の4つの問いに答えられるようにしましょう。

  • ビジネスサイドが解決したい課題は何か?
  • 課題解決に必要なデータは何か?
  • 課題解決に必要なデータをどのように提供するのか?
  • ビジネスサイドが気付いていないデータ要件の仮説を考えたか?
図2.11.1 データマネジメントのサービスイメージ
図2.11.1 データマネジメントのサービスイメージ
DXを成功に導くデータマネジメント

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DXを成功に導くデータマネジメント
データ資産価値向上と問題解決のための実務プロセス75

著者:データ総研、小川康二、伊藤洋一
発売日:2021年12月20日(月)
定価:2,200円(本体2,000円+税10%)

本書について

本書は、DXを推進・成功させるために必須となったデータマネジメントについて多くの企業を支援してきた専門会社が、「データ駆動型経営」を絵に描いた餅にしないためにはどうすればいいのか詳しく説明しています。

 

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://enterprisezine.jp/article/detail/15309 2021/12/20 07:00

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