「統一オブジェクトモデリングアプローチ」から「ICONIXプロセス」へ
オブジェクト指向設計の草創期、スウェーデンのイヴァー・ヤコブソンと彼の同僚はObjectoryという簡潔で分かりやすいプロセスを開発しました。Objectoryはソフトウェア工学に「ユースケース」を取り入れ、そのユースケースで表現されたユーザ要求を満たす段階的なアプローチをオブジェクト指向ソフトウェア設計にもたらしたのです。
そのころ、ICONIX社はCASEツールを開発していました。そして、私たちはヤコブソンのアプローチをサポートしたプログラム「ObjectModeler」をつくりあげました。ObjectModelerは、グラディ ブーチとジム ランボーのメソッド(ブーチ法とOMT)もサポートしました。その数年後、ブーチとランボーとヤコブソンが協力して、統一モデリング言語(UML)やラショナル統一プロセス(RUP)を生み出しました。
1993年ごろ、私たちはObjectory、OMT、Booch法のベストプラクティスを発展させた開発メソッドをつくり、「統一オブジェクトモデリングアプローチ」と名付けてCD-ROMで発行しました。この約2年後にラショナルがUMLをリリースし、さらに約1年後にラショナル統一プロセスをリリースしました。これらとの混乱を避けるために、私たちは「統一オブジェクトモデリングアプローチ」を「ICONIXプロセス」に改名したのです。
ラショナルは、UMLとRUPを開発するにあたって、ブーチ、ヤコブソン、ランボーの3人によるアプローチをすべてを取り入れたいと考えていました。そのため、UMLは非常に大きく複雑なものになってしまいました。また、ラショナルはRUPを開発する際に、数多くの製品と連携するプロセスを作成しました。そして製品に変更が加えられていくにつれて、ユースケースからコードを得られる簡潔で分かりやすいプロセスは、ほとんどどこかへ行ってしまいました。しかし、『ユースケース駆動開発実践ガイド』は、この本来の目的に忠実なままです。
『ユースケース駆動開発実践ガイド』
~オブジェクト指向分析からSpringによる実装まで
著:Doug Rosenberg / Matt Stephens
訳:佐藤竜一 / 船木健児 監訳:三河淳一
ISBN:9784798114453