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2人でグローバル規模のクラウドを統括 富士フイルムBIのCCoEが進める“クラウド起点の改革”とは

【第6回】対談ゲスト:富士フイルムビジネスイノベーション株式会社 田中圭氏、木下勇人氏

 組織全体のビジネスを変革することを目的としたクラウド導入・活用には、全体的な戦略やガバナンス、ベストプラクティスの開発と管理を担当し、組織をリードする部門横断的な存在が欠かせない。その担い手として注目されているのが、「クラウドセンターオブエクセレンス(CCoE)」だ。本連載では、本メディアでFinOpsに関する記事を連載中のApptio株式会社 セールスディレクター 宮原一成氏をホストに、先駆者との対談を通じてCCoEの導入や活用、効果などについて探っていく。今回は、富士フイルムビジネスイノベーション株式会社 エンタープライズドキュメントソリューション事業本部/クラウド統括で2018年よりクラウド統括を担う田中圭氏、木下勇人氏を迎え、同社のCCoEの考え方や具体的な取り組みについて伺った。

2人でグローバル規模のクラウド基盤を統制

宮原一成氏(以下、宮原氏):富士フイルムビジネスイノベーションでCCoEがなぜ設置され、どのように変化してきたのか。はじめに、発足の目的や経緯についてお聞かせください。

田中圭氏(以下、田中氏):CCoEの発足自体は2014年です。当社のソリューションやサービスにおいてクラウドに関するコストがかさむようになりました。加えて「コストを削減するためにはどうしたらよいのか」「どのように利用すれば安全なのか」といった様々な課題が挙げられるようになるなど、クラウドに係る課題解決に取り組むために設置されました。

 現在は、私と木下の2名でパートナー企業と連携しながらCCoEとして活動にあたっています。富士フイルムホールディングスのIT部門に紐づく形で当社のIT部門があり、そこで「社内クラウド」と「ビジネスクラウド」の2つを社内標準クラウドとして据え、後者について統括しています。

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 他社と少し異なる部分は、クラウドの統括を担う部門がIT部門ではなく事業部門内にあることです。お客様によりよいサービスやソリューションを提供するため「自分たちが利用するビジネスクラウドは、自分たちに合った運営の仕組みを企画・統括することが重要」という考え方に基づいています。そもそも技術者として自分たちが便利に使えなければ、サービスの質も落ちるばかりです。また、クラウドベンダーの技術を積極的に取り入れており、使いこなすための社内教育などにも力を入れています。

 どうしてもクラウドの特性として、その費用の多くをランニングコストが占めるため、新たなサービスの開発費を確保するためにも削減が必要です。それも個別最適では限界があるので、サービスや商品横断で取り組み、インフラやアプリケーション自体をクラウドに特化することで、大きなコスト削減効果を得ています。クラウドのメリットを活かすために、ローンチ後のこまめな改善やバージョンアップができるよう“アジリティ”を高めることを目標としています。

宮原氏:なるほど、具体的にはどのような役割を担われているのでしょうか。

田中氏:大きく、下記6つを役割として掲げています。

  1. クラウド利用促進
  2. 統制
  3. 各種調整
  4. プロジェクト支援
  5. 企画・改善
  6. クラウド人材支援

 2014年からAmazon Web Services(AWS)、2016年にGoogle Cloud Platform(GCP)を使い始めており、2021年の社名変更および商圏の広がりを受けて、現在はマルチクラウドかつグローバル規模の「ビジネスクラウド基盤」と位置づけて、開発者支援や脆弱性対応のための共通プロセス、その仕組みなどを導入しています。

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木下勇人氏(以下、木下氏):2016年のAWS導入時にシンガポールと接続しており、その後北米やユーロ圏、中近東などの海外リージョンとも接続することで“ビジネスクラウド基盤”としてのグローバル化を図りました。それに従って、私たちもCCoEとしてグローバル規模でのクラウド統制を行っています。このように言うと驚かれる方もいらっしゃるのですが、そうしたことができることもパブリッククラウドのメリットといえるでしょう。

田中氏:より詳細に説明すると「クラウドデザインパターン(CDP)」を策定、適応させることで統制していることになりますね。パブリッククラウドでは利用者側の統制責任として任される部分が大きいのですが、そこを野放しにすると様々な不具合が生じてきます。そこで、100以上のマルチテナントアーキテクチャを基にして、幅広い適用システムと構築パターンの併用化をCDPとしてまとめたわけです。

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 そこには、社内規約やルールに則ったクラウド管理ポリシーによる統制、アクセス制御、データセキュリティ、アイデンティティやアクセス管理、そしてCSPM(Cloud Security Posture Management)による発見的統制などが定められています。

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この記事の著者

伊藤真美(イトウ マミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

宮原 一成(ミヤハラ カズナリ)

Apptio株式会社 セールスディレクター早稲田大学卒業後、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)に入社。大手企業向け営業、営業マネージャ、ソリューション営業マネージャを経て、2016年にチームスピリットに入社。2017年から取締役としてマーケティング、セールス、コンサルティング、カスタマーサクセス...

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