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SAPが掲げる「デジタルサプライチェーン」、高まるビジネスネットワークの価値

  2022/05/12 08:00

先進企業が示す水平連携の方向性

 ここまでで紹介してきたSAPの取り組みへの期待は、グローバルでは総じて高い。ただし、日本企業に限ると、実践に向けた意欲を示すところはまだ少ないという。これにはクラウドERPの導入状況が関係している。欧州企業の場合、10年以上前から日本企業と比べて広い範囲の業務にERPを導入してきた。そのため、企業内の計画系のデータ連携が安定的にできる環境が整備されており、「次は企業外」と、次の変革に向けた目標が視野に入る。これに対して、日本ではERPを導入しているものの、会計だけで生産管理は導入していないところが多い。

 原氏によれば、SAPへの日本の製造業からの相談で多いのは、「設計と製造」や「購買と製造」のように、業務間を横断するような仕組みの構築についてだという。同じデータ連携でも、企業間の連携が水平連携だとすると、こちらは製造現場から経営(事業部)への垂直連携と言える。具体的には、製造現場にMES(Manufacturing Execution System)を導入し、ERPにつなぐ。すると、ERP側で作った計画をMES側で実行し、実行結果をERPにフィードバックする仕組みができる。これは前述の「今ある部材で何の製品がどれだけ作れるか」を素早く検証することにも役立つ。S/4 HANAへの移行が終われば、また状況が変わる可能性もあるが、「日本ではまだERP+MESへの投資が中心です」と原氏は現状を語った。

 サプライチェーンの混乱への対処も頭にはある。しかし、今の顧客の要望に応えるためにも、製造の仕組みへの投資の優先度が高いという認識なのだろう。また、計画業務の改善は対処療法で終わらせられないとわかっていて、着手の時期を見極めたいと考えている可能性もある。だが、人海戦術で乗り切るには、限界があるのではないだろうか。垂直連携と水平連携の両方を実現すれば、難局を乗り越えるだけでなく、次の成長に向けた経営を実現できるはずだ。財務計画のモニタリングに関しては、問題を抱える企業は多いが、難しい経済環境だからこそ、仕組みの高度化が求められている。



著者プロフィール

  • 冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

     IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。ビジネスとテクノロジーのギャップを埋めることに関心があり、現在はマーケティングテクノロジーを含む新興領域にフォーカスしている。

  • 京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

    翔泳社 メディア事業部。EnterpriseZineの他、翔泳社のメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在は、嘱託社員の立場でEnterpriseZineをメインに取材・記事・コンテンツ制作にも携わる。 kyobe(a)shoeisha.co.jp

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