狭義から広義へ、拡張するエンドツーエンドの範囲の認識
「サプライチェーンマネジメント」と聞いて、イメージする業務はどんなものだろうか。一般的な理解ではおそらく計画と物流であろう。しかし、SAPが考える「デジタルサプライチェーン」は違う。企業内では、設計、計画、物流、製造とつながり、出荷後の物流、納品後の設備保全、さらにはビジネスネットワークを通して企業間ネットワークともつながるものと、SAPでは捉えている(図1)。
また、エンドツーエンドの価値を実現するにあたっては、企業内のプロセスだけではなく、商流全体を意識し、仕入れ先から物流、小売、お客様までを含めたプロセスまでを繋ぐべきと、SAPは主張する。つまり、エンドツーエンドのプロセスとは、企業内に閉じたものではないということだ。この考え方に基づき、SAPは「Design to Operate」を掲げて製品拡充を進めている。原氏はこの「Design to Operate」を、顧客への現在の提案内容というよりも、将来のニーズを先取りしたSAP自身の取り組みの全体像と説明する。
図2は、その一例として、機械装置メーカーにおける業務の流れを示すものである。これは、仕様定義からBOM変換を行うプロセスから始まり、最適化のための需要計画、供給計画、基準計画の策定プロセスへと続く。その後は、半製品を生産するための部材の手配から納入、半製品の加工組み立て、最終製品を組み立て、出庫という流れだ。販売は業種業態によってタイミングが変わるが、この例では顧客から注文を得た段階となっている。そして、出庫のタイミングで輸送計画を立て、納品、顧客指定の場所への設置を行う。設置後は、顧客の利用状況に応じてメンテナンスサービスを提供しなくてはならない。そこで保全計画を立て、適切な時期に実施する。
この一連の業務を滞りなく実現しようとすると、SAP自身が提供する各種製品間のデータ連携が不可欠である。なぜならば、一連のプロセスに変更が発生すると、後ろの計画の実行に影響するためだ。冒頭で述べたような事象は、計画の見直しが必要になる典型例だ。例えば、半導体不足が起き、上流の部材の供給計画に滞りが生じれば、その部材を使う製品の生産計画を見直さなくてはならない。加えて、その先の販売や物流の計画も見直しが必要になる。「業務は単独で存在しているわけではありません。周りの部門やプロセスの前後への目配りが必要です」と原氏は指摘する。だからこそ、計画単体、物流単体にとどまらず、SAPは商流全体を意識して関連製品に必要な機能実装を進めている。