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SAPが掲げる「デジタルサプライチェーン」、高まるビジネスネットワークの価値

  2022/05/12 08:00

計画のレジリエンスを高めるために必要な2つの視点

 商流全体を見るという視点は、昨今の情勢で重要性が指摘されるレジリエンス(回復力)の高いサプライチェーンの構築にも関係する。計画への影響が大きくなってから、問題を認識するようでは、後手に回った対応しかできない。レジリエンスを高めるためには、問題発生を素早く、的確に認知する「Sense」、将来発生しうる影響を予測し、事業戦略に沿ったシナリオを検証する「Predict」、改善や問題回避の実行計画に落とし込む「React」の3つが重要と原氏は話す(図3)。

 そのビジョンを端的に示した言葉が、「シンクロナイズドプランニング」である。原氏によれば、これは「Design to Operate」における計画系に焦点を当てた取り組みでもあるという。その裏側ではSAPの関連製品が連携している。同社の計画系ソリューションは、財務計画はSAP Analytics Cloud、サプライチェーンの需要予測や供給シミュレーションはSAP Integrated Business Planning、生産計画はSAP S/4 HANAにと、大きく3つの分野に分かれるが、「Sense」「Predict」「React」を実践できるよう、製品同士の連携を実現し、企業のニーズに対応できるようにした。

図3:シンクロナイズドプランニングの3つの要素 出典:SAPジャパン

図3:シンクロナイズドプランニングの3つの要素 出典:SAPジャパン [画像クリックで拡大]

 原氏は、計画に整合性を持たせる上で留意すべき観点を2つ挙げた。その1つは、数量ベースと金額ベースの整合性である。この2つが別々では、問題が起きた時に何を優先するべきかがわからない。例えば、既存顧客からの急ぎの要望を依頼されることがよくある。しかし、無理をして対応しても、利益に結び付かない可能性を考慮に入れるべきではないか。これは数量ベースの計画だけを見ていてはわからない。2つの計画の整合性が取れているとは、つまるところ片方を修正したら、もう片方に自動的に修正が反映される状態だ。その仕組みがあれば、変更後の計画が利益に結びつくか否かを合理的に判断できる。

 もう1つは短期と中長期の計画間の整合性である。月次や週次の計画の実行状況を中期計画と照合し、乖離がないかを確認しながら進める。反対に、中期計画の実行状況と最新状況と照合し、生産調整を行う。どちらも人海戦術に頼っていては難しい。原氏は、「短期計画で見ている範囲は、自分の部署や拠点だけですが、中期計画の範囲は他の部署や拠点にも関わるものです」と話す。これは重要な指摘だ。

 これまでは部材の供給自体に問題はなかったため、顧客にいつ納品できるかが重要だった。ところが、今は部材そのものが足りない。製品A、製品B、製品Cの生産に共通の部材が入手しにくい。計画の前提自体が変化しており、これまでよりも複雑なシミュレーションを必要とする場面が増えているのだ。だとすると、確保できた分の部材で、どの製品をいくつ生産すれば最も多くの利益を稼げるかを検証しなければならない。正しい判断と対応を行うには、計画同士が連動していることが必要になる。

 これらの悩みを解決するには、「Sense」「Predict」「React」の実践が可能な仕組みがなくてはならないと、SAPは考えた。


著者プロフィール

  • 冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

     IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。ビジネスとテクノロジーのギャップを埋めることに関心があり、現在はマーケティングテクノロジーを含む新興領域にフォーカスしている。

  • 京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

    翔泳社 メディア事業部。EnterpriseZineの他、翔泳社のメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在は、嘱託社員の立場でEnterpriseZineをメインに取材・記事・コンテンツ制作にも携わる。 kyobe(a)shoeisha.co.jp

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