データ分析を「単なる分析」で終わらせない
日本にはデータサイエンティストやデータアナリストといった、データ分析の専門人材が不足していると言われています。そうした中、滋賀大学は2017年に日本で初めてとなる「データサイエンス学部」を開設。現在、同学部で教鞭をとるのが本書の著者である河本薫氏です。
河本氏は、大学院卒業後の1991年に大阪ガスに入社。2011年からは同社データ分析の専門組織である「ビジネスアナリシスセンター」の所長に就任し、データと分析力で事業に貢献することに取り組んできました。
同氏は、前線でデータ分析をしていた時代について「初めの5年ぐらいは、なかなか成果が出ずに苦しんだ」と振り返ります。「正確に言えば、データ分析には成功するが、現場業務に活用されるまで至らないのです」と付け加えました。データ分析に取り組む方であれば、河本氏のように「現場業務に活用されない」といった悩みを一度は感じたことがあるのではないでしょうか。
それでは、なぜ現場で活用されないのでしょうか。悩み抜いた著者がたどり着いたキーワードは「意思決定」でした。その理由を次のように説明します。
「『現場で活用される』とは『現場の意思決定に活用される』ということ。『意思決定に活用される』とは『意思決定プロセスに分析結果が使われる』ということ」。つまり「分析結果が意思決定に活用されるように『意思決定プロセスを設計する』必要がある」
上記のことに気づいた著者は、それ以来、データ分析を単なる分析で終わらずに、現場での活用までたどり着くことを意識すると、結果に結びつくようになったそうです。そして、そうした成功体験を重ねるうちに、データ分析を「意思決定プロセスを設計する方法」として体系化。本書には、著者がたどり着いた「意思決定プロセスを設計する」考え方が詰め込まれています。
本書の1章、2章では、データ分析をビジネスに活かすためのやり方について、筆者が提唱するフレームワークを紹介。3章では、どのような行動を促したらいいのか筆者のアイデアが述べられています。また、それぞれについて具体的な場面を想起して理解しやすくするために、全28の架空のケーススタディも合わせて掲載されています。
次のページでは、序章のデータ分析を活かせる企業との違い、1章の問題発見と課題設定について紹介します。