熱海で湧く、安全保障視点のサイバーシンポジウム
「熱海」と聞いて、多くの人は何を想像するだろうか。恐らく多くの人は温泉を真っ先に思い起こすだろうが、熱海を初めて訪れた筆者にとってその地は「サイバー」が真っ先に浮かぶ地となった。温泉目的の行楽客を横目に駅から徒歩10分ほど歩くと、今回の目的地であるKKRホテル熱海へと到着。7階建てのホテルは、展望浴場から相模灘を一望できる好立地にある。だが残念ながら筆者は予約が取れず、熱海駅近くのビジネスホテルに宿泊となった。
今回で3回目の開催となる「サイバー防衛シンポジウム」。今年のテーマは「改めて『サイバー戦』を考える!~ロシア・ウクライナ戦争の裏側〜」だ。シンポジウムの始まりは2019年。元々スポンサーなどを入れずに参加者の会費制で行われ、官民におけるサイバーセキュリティ人材交流の場として始まったものだった。そこで行われた講演や人材交流が好評だったことから、2020年よりスポンサーをいれて大々的に実施する方向へ。
だが新型コロナの流行と重なり、当初はわずか50人と大きく間引きした状態で行わざるを得なかったという。今回会場の枠としては約200人の席が用意されたほか、オンラインでもほぼ同数の200人のチケットが販売され、そのすべてが早期に完売したとのこと。
実際、現地の聴講者に取材すると「日本のセキュリティ環境に危機意識があり、民間の立場としてどう貢献できるか考えたい」(民間セキュリティ担当者)、「貴重な官民交流の場ということもあり、どうしても来たかった」(官公庁関係者)など、昨今の国際情勢もあってか、参加者のモチベーションは高かった。
初日に登壇した海上自衛隊の元海上幕僚長である武居智久氏は講演の中で、ロシアによるウクライナ侵攻への見解と、今後考えられる台湾有事がもたらす日本への影響に触れた。武居氏は、今回の戦争がサイバー戦における実施主体が拡大したことを挙げ、自身の見解としてサイバー攻撃にはSNSなどを用いた「情報操作型」、マルウェアなどによる「破壊型」の二つに大別できるという。