大半の企業が理解できていない「データドリブン」の本質──システムやデータを頑張っても結実しない理由
【第1回】IT部門推進の限界、デジタル変革を阻害する真の要因とは

多くの企業でDXが推進される一方、その大多数がうまくいっていない状況である。大きな要因の一つとして、データドリブンが実現できていないことがあり、その背景には、組織の文化的な側面が大きく影響を及ぼしている。連載「変革を実現させるための『データガバナンス』──DXやCX、データ活用へ向けて」では、阻害要因となる組織的な問題に注目し、DXを成功に導くための専門組織の組成や、攻めと守りのデータガバナンスなど、課題解決に向けたアプローチ方法について5回にわたり解説する。
DX実現のために重要な「データドリブン経営」
近年、急速な社会環境の変化や加速するデジタルテクノロジー、それらにともなう消費者ニーズの多様化など、ビジネス環境は激動的に変化している。企業がその変化に追従するためには、「DX」という言葉を一時的なバズワードではなく、実現しなければならない必須テーマとして捉えるべきと感じている。
これからのビジネス環境下では、デジタルを活用することで新たなビジネス価値を創出し競争優位性を確立しなければならず、その実現のためにはデータドリブン経営が必須の取り組みと言える。
つまり、データドリブン経営とは、企業が得られるさまざまなデータをビジネスの根源として駆使することで、正しい意思決定に導くことである。
ビジネスの世界では、ヒト・モノ・カネと並んで「情報(データ)」も重要な資産とされているが、本質的には情報(データ)によって、ビジネスのモノゴトが動いていると言える。ビジネスに必要となる情報をデータとして正しく管理し、なおかつそのデータを有効的に利用できれば、ビジネスそのものを動かすことと等しいと言える状況になる。
たとえば、ビジネスにおける情報の流れを見ると、マーケティングや営業活動などを経て、顧客から注文(店舗窓口、インターネット注文、電話など)を受け、契約行為と支払(現金、売掛など)によって顧客へサービス(価値)を提供する。そのサービス提供のために消費されたリソース(働いているヒト、仕入れたモノ、製造・加工、場所などの環境、それらに関わる間接費用など)と突き合わせることで損益情報(売上、費用、利益など)が管理されている。
これらのビジネス情報がすべてデータ化(デジタル化)されていれば、ビジネスにおけるすべてのモノ・コトが事実として容易に詳細把握でき、なおかつそのデータを正しいロジック(モデル)で分析することで、今後のビジネス予測(経営予測、マーケティングなど)につなげることができる。さらに、別の角度のデータを組み合わせることで新たな洞察を得ることが可能となり、その結果、新たなサービスや商品の提供、今までと異なったイノベーティブなビジネスを生み出すことができるようになる。
デジタルテクノロジーやシステムにより生み出されたデータが、正しい形で活用されることで、以下のようなことが実現する。
- 顧客データ分析・活用によるCX(顧客体験)向上
- プロセスの自動化による業務改革
- さまざまな事実データや予測データによる意思決定の高度化……など
これらのデータ活用による改善・向上、高度化などの実現の積み重ねがデータドリブン経営となり、これをどのように実現していくのかが大きなポイントになる(図1)。

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小林 靖典(コバヤシ ヤスノリ)
株式会社クニエ シニアマネージャー
ITコンサルタントとして、システム企画、提案依頼書策定、要件定義分野から、データマネジメント/データガバナンス(データアーキテクチャ、MDM、データHUB、DL/DWH/BI、メタデータ管理、データ品質管理、データガバナンス組織構築、制度策定など)の分野で多数の実績を有...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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