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【第2回】データドリブン経営を実現に導く手法──データを制する強力なデータガバナンスとは

 データドリブンを実現させるために“さまざまなデータに関する施策”を実施している企業の多くは上手くいっていない。一体何が問題なのか。今回は、解決に導くための「データスチュワード・シップ」「データガバナンス」とは何かを解説していく。

データガバナンスとは

 まず、データガバナンスとは何か。国際データマネジメント協会(Data Management Association International、略称:DAMA-I)発行の『データマネジメント知識体系ガイド 第二版(Data Management Body of Knowledge、略称:DMBOK 2)』では、以下の定義がなされている。

定義

データ資産の管理を職務権限を通して統制し、意思決定を共有する(計画を立てて、実行を監視し、徹底させる)こと

ゴール

  1. 組織が自身のデータを資産として管理できるようにする
  2. データマネジメントに関する原則、ポリシー、手続き、評価指標、ツール、責任について定義し、承認し、伝達し、実施する
  3. ポリシーの遵守、データの利用、管理活動を監視し導く

 この「統制・監視・徹底」という文面から、一般的にデータガバナンスとは、セキュリティや品質などデータを守るための基準や規約を作り、従わせていくことがミッションであると認識されているのではないか。それも理解としては誤りではないが、その認識のみでデータガバナンスを推進すると、“データの制約”に傾いてしまう。基準や規約を守らせるだけのデータガバナンスを実施していては、データ活用に関する活動が萎縮してしまい、データに関する全社的な課題は解決せず、組織として良いカタチにはならない。

 データガバナンスで実現すべきことは、企業全体のデータ資産価値を向上させるために、データに関する成熟度を向上させて組織や環境に変革をもたらすことである。

 目指すべきデータガバナンスとは、ビジネスに変革をもたらすために「データはどのような状態になっていなければならないのか」「データから何が見えなければならないのか」「データに関するリスクには何があるのか」など、これらデータに求められる要件を管理し、具体化していくための活動を統制することであり、ひいてはデータドリブンの実現へ導くことである。

データガバナンスが効いていないとどうなるか

 では、実際にデータガバナンスが上手く推進できていない企業は、どのような状況に陥っているのか、4つの事象を例として紹介する。

  1. システムなどの入れ替えやデータ基盤構築のタイミングで対応策を講じるが、個別のプロジェクトに依存してしまい、全社として統制の取れた対応が実施できていない。そのため、新たなシステムなどが構築されても結果的に課題感が変わらない
  2. 顧客や取引先といった外部データを取り扱うビジネスを検討しているが、個人情報の取り扱い同意などデータを管理していく環境や仕組みが整っておらず、データを利用する上でのリスクを排除できないため、サービス連携を進めることができない
  3. 業界規制やコンプライアンス、個人情報・機密情報の取り扱いに関する対応などが企業全体として実施できておらず、ビジネスを継続する上でのリスクとなっている
  4. 新たなビジネス創出のため、データ活用プラットフォームやビジネス・エコシステムの構築を推進していたが、コアとなるデータがそれぞれの領域や組織で統一できず、断念してしまっている
図1:データガバナンス不在によるデータ課題

図1:データガバナンス不在によるデータ課題
[画像クリックで拡大]

 前述した事象はあくまでも一例であるが、どの企業でも類似するデータ課題が複合的に発生していると捉えている。

 しかし、組織としてデータガバナンスが推進できている企業は、着実にこれらの課題を解決し、データ活用の高度化を実現させており、「DX時代」が到来している現在、ビジネスにおける競争力として大きな差が生じつつある。

次のページ
データドリブンを実現に導く「データガバナンス」とは

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この記事の著者

小林 靖典(コバヤシ ヤスノリ)

株式会社クニエ シニアマネージャー
ITコンサルタントとして、システム企画、提案依頼書策定、要件定義分野から、データマネジメント/データガバナンス(データアーキテクチャ、MDM、データHUB、DL/DWH/BI、メタデータ管理、データ品質管理、データガバナンス組織構築、制度策定など)の分野で多数の実績を有...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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