「リフト&シフト」で取り組む全社のデータ活用
保田氏が現在籍を置くパイオニアは、1938年の創業の老舗電機メーカーとして知られている。同社は2010年代の紆余曲折を経て、現在は「NP」「データソリューション」「市販」「OEM」「サウンド」「光ストレージ関連」の6つの事業を展開しており、そしてここ数年は大きな体制変更を経験した。
その皮切りが2019年3月の東京証券取引所上場の廃止である。以降はPEファンドの出資を得て、事業構造改革を進めている最中だ。2020年には新しい経営者を招聘し、2021年には新生パイオニアとしての中期経営計画を策定した。2022年からはその計画に即して、メーカーからソリューションサービス企業への変革に取り組み始めている。
この変革を成功させるためにデータ組織が果たすべき役割は大きい。保田氏は、社員1人ひとりが自身とビジネスの成長のために自走し続けられるよう、3つの要点を指摘する。
- 能動的にデータを見て、
- データに基づく意思決定・PDCAを回し
- 新しい次の人材を育てること
とはいえ、保田氏自身が入社した2021年当時は、全社的なデータ活用に取り組もうにも、専門知識を持つ人材が不足しており、目指す姿からは大きな隔たりがある状況だった。
パイオニアのように体制の整備から始める場合、そのアプローチは大きく2つに分かれる。1つは「社内の人材を育成すること」、もう1つが「アウトソーシング」である。パイオニアの選択は前者で、プロパー社員のスキルアップに加えて、中途入社で組織に加わった社員と一丸となり、内側から体制を鍛えていくことに取り組み始めた。
そのために2021年8月に立ち上げたデータ組織が、SaaS Technology Centerである。この組織のミッションを保田氏は社内では「リフト&シフト」と説明していると話す。リフトにはパイオニア全体を持ち上げること、シフトにはビジネスモデルの転換の意味が込められており、全社視点で人、組織、プロセスの強化と、ソリューションビジネスへの変革への貢献を目指している。
このSaaS Technology Centerは、ビジネス系データ集団とテック系データ集団の2つで構成される。それぞれビジネス系データ集団は事業部に入り込み、ビジネス活動におけるデータ活用の推進とその底上げを行い、テック系データ集団はパイオニア全体のデータ活用の推進とその底上げに取り組む。この2つのデータ集団が連携しながらパイオニアは社内のデータ活用に取り組んでいる。