SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

直近開催のイベントはこちら!

EnterpriseZine編集部ではイベントを随時開催しております

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

LayerX 中村龍矢氏と探る「プライバシーテック」最前線

LINEで進むプライバシーテックの実装──基礎研究を経て、事業の最前線へ身を投じた2人が描く世界とは

LINEが「スタンプサジェスト機能」に差分プライバシーを適用、髙橋翼氏と竹之内隆夫氏を訪ねる

 LINEは2022年9月26日、LINEアプリにおけるスタンプ選択時のサジェスト機能をアップデートした。新たにユーザーのプライバシーを保護しつつ利便性向上を目指すため、連合学習(Federated Learning)や差分プライバシー(Differential Privacy)と呼ばれる技術を導入している。これらプライバシーテック導入の中核となったのが、同社データサイエンスセンターの髙橋翼氏と竹之内隆夫氏だ。今回、LayerXの執行役員 兼 PrivacyTech事業部長である中村龍矢氏が両氏にインタビューを行った。

NECで出会った2人がLINEで合流

中村龍矢氏(以下、中村氏):竹之内さんとは前職の頃からプライバシーテックのお話しをさせていただき、髙橋さんとはLINEチームとして、私が所属するLayerXのチームでお会いしています。2人はLINEにおいてプライバシー保護などの研究開発で圧倒的な成果を出されており、何より日本の社会インフラの1つといえる大規模アプリケーション「LINE」への実装も進められるなど、今回は非常に勉強になると楽しみにしていました。まずは、経歴と現在の活動から教えていただけますか。

竹之内隆夫氏(以下、竹之内氏):最初に就職したのはNECで、実はそこで髙橋さんと既に出会っています。その後、デジタルガレージ社を経て、2022年5月にLINEにジョインしました。会社は変わりましたが、NEC在籍時から十数年にわたりプライバシー保護やセキュリティの技術の研究開発や事業開発に取り組んでいます。

 プライバシー保護技術は、技術を導入するだけでは不十分ですし、同時に“100%保護できる”技術でもありません。さまざまな前提条件が必要で、技術以外にもたとえば法制度での補完なども必要です。そのため、技術の研究だけでなく法制度のことも少しずつ学習しているうちに、気がつけば両方のスキルを有している人材として、LINEに声をかけられて入社しています。

 LINEでは、既に研究開発において髙橋さんなどのメンバーが高い技術成果を出していますが、私はその技術を社内に適用したり、社外にアピールして技術を広めたり、あるいは法制度関係の活動をしたりして、エバンジェリストのような活動をしています。

髙橋翼氏(以下、髙橋氏):私は筑波大学の修士課程を出た後に、新卒でNECの中央研究所に入りました。プライバシー保護に取り組んだきっかけは、修士課程でのWebマイニングの研究です。Webをクローリングしてデータを集めていたのですが、同級生から「プライバシー面は大丈夫か」と聞かれ、気にすべきだと思ったことが始まりでした。

LINE マネージャー / シニアリサーチャー / 博士(工学)Data Science センター Machine Learning Solution 室 ML Privacy チーム 高橋翼氏
LINE マネージャー/シニアリサーチャー/博士(工学)
Data Science センター Machine Learning Solution 室 ML Privacy チーム 髙橋翼氏

 当時NECが、経済産業省の「情報大航海プロジェクト」[1]に採択されたことを契機に匿名化の研究開発を始めた頃で、おもしろそうと思い応募しました。研究は続けていたのですが、残念ながらプライバシー保護技術が大きな事業としては実を結びませんでした。その後、2018年にLINEから新しくリサーチチームを作るという話をもらい、ジョインしました。

中村氏:なるほど、NEC時代からの縁だったのですね。今では少し求められている役割が異なりますが、2人で密にお話しされる機会も多いのでしょうか。

髙橋氏:つい昨日も2時間ほど話していますね。特にこの分野は未成熟で、何かをやろうとしても情報が少なく、自分たちで答えを出す必要があります。一人で考えた結論では正しいか不安になるため、できるだけチームで議論しながら進められる体制を作りたいと思っています。現在メンバーは5人いて、同じ領域における前提知識は共有されていますが、得意分野が少しずつ違うためいい刺激になっていますね。

[1] 参考:「『情報大航海プロジェクト』について」(経済産業省、PDF)

次のページ
研究テーマをどのように選定しているのか

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
関連リンク
LayerX 中村龍矢氏と探る「プライバシーテック」最前線連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

吉澤 亨史(ヨシザワ コウジ)

元自動車整備士。整備工場やガソリンスタンド所長などを経て、1996年にフリーランスライターとして独立。以後、雑誌やWebを中心に執筆活動を行う。パソコン、周辺機器、ソフトウェア、携帯電話、セキュリティ、エンタープライズ系など幅広い分野に対応。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)

1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/17251 2023/02/15 08:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング