あいおいニッセイ同和損保におけるデータ活用の取り組み
山田氏は、あいおいニッセイ同和損保の経営企画部 データソリューション室で主にデータを活用したビジネス開発、新規企画を担当している。同部署では、保険のサービスを提供する上で蓄積されるデータを分析することで保険をより良いものにすること、そして今回のLayerXとの取り組みのような、保険の周辺データから保険以外のソリューションを生み出すことをミッションとしている。そのため、データサイエンティストが多い部署だという。
保険にとどまらないサービス・ソリューションを生み出していくことがMS&ADホールディングス全体としての力点となっている中で、同グループのあいおいニッセイ同和損保が蓄積しているデータは走行データや事故データなど貴重なもの。外部からデータを共有してほしいという相談も多くあり、同社でも外部と協力して新たなサービスやソリューションを作り出したいと考えてきた。
それを象徴するように強く押し出されているメッセージが「CSV×DXステートメント」だ。これは、国内外のパートナーと協業して最先端のデジタル技術やビッグデータを掛け合わせることで、リスクに臆することのない、安全・安心で快適な社会を創り出すというもの。「ここに事故防止をつなげていきたいと考えました」と山田氏は語る。また、保険業法の改正が施行されたことにより、保険外における取り組みが可能になるなど追い風が吹く。
特に「CSV×DX」の観点では、テレマティクスの走行データを活用することで、事故を減らすことに寄与できる。さらには、ユーザーが安全運転を意識することで燃費が向上し、CO2の削減にもつながるなど、エコの面でも効果が期待できるという。この取り組みを広げていくことで、保険の契約者だけでなく地域にもメリットを還元していくことが可能だ。
たとえば、急ブレーキなど事故の危険性が高い場所が分かれば、注意を促せる。車の振動が多く検知される場所が分かれば、「路面に問題があるのではないか」とインフラ管理にも活用可能だ。さらに拡大すれば、私たちが健康に生きることにもつながり、スマートシティなどの取り組みも広がっていく。このような「データの流通による(価値の)連鎖」を考えていると山田氏は述べる。
その一方で、データを外部活用することは一筋縄ではいかない。ユーザーのプライバシーに関わるセンシティブなデータでもあるため、安全に外部に出すことが求められるからだ。あいおいニッセイ同和損保としても具体的なソリューションがなく、解決方法を模索していた。