大手コンサルティング「ビッグ4」の中でEYが採った差別化戦略とは
コンサルティング業界におけるErnst Young(以降、EY)は、巨大な会計事務所ネットワークを活かし、デロイト、KPMG、PwCと共に「ビッグ4」の一角を占める総合コンサルティングファームである。経営戦略立案からIT導入までクライアントに幅広いサービスを展開する世界最大級のB2B組織としての一面を持つ。2022年度の売上は454億ドル、前年度比で16.4%(現地通貨ベース)の成長を記録した。日本を含む世界140カ国、約40万人の従業員が働いている大規模で複雑なネットワーク組織を運営している。クライアントは他のB2Bビジネスと同様に企業であるが、商品は人材である。「私たちは仕事を提供し、仕事を販売するのです」とホプキンス氏はビジネスの特徴を語る。
プロフェッショナルサービスのビジネスは競争が激しい。コンペでは、前述のビッグ4以外にもグローバルのトップファームやブティックファームらと、案件獲得にしのぎを削らなくてはならない。EYが差別化のために着目したのが「顧客体験」である。昨今、B2BビジネスにおけるWebサイトは、ソリューション提供能力を評価するデジタル接点としての重要性を増している。B2Bの顧客は、情報収集を行なっている段階で、営業との接点を持つことを好まない。商談化の前からWebサイトを通じて多くの情報を得ており、自分が重要と考えるコンテンツがタイムリーに提供されるかでその組織のソリューション提供能力を「値踏み」している。
見方を変えれば、顧客が情報収集を行う段階でどれだけ「この会社は私たちのことを理解してくれている」と思わせるコンテンツを提供できるかが顧客ロイヤルティを高め、自社のブランド確立を促すことにつながる。しかし、ここまでの規模のファームにとって、クライアントにグローバルで一貫した体験を提供することは容易なことではない。特に大きなチャレンジがパーソナライゼーションである。パーソナライゼーションを実現するには、大量のコンテンツを用意すること、そしてビジターが誰かを正しく把握することが求められるためだ。しかもそれをグローバルでともなれば、さらに複雑な仕組みが必要になる。