楽天グループ成長の2つの原動力
2022年に創業25周年を迎えた楽天グループは70以上のサービスを展開している。平井氏は成長の原動力として大きく2つの取り組みを挙げた。
1つ目は「Englishnization」。これは、同グループの創業者で代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏の造語で、社内公用語英語化を意味するものだ。2010年に始まったこの取り組みにより、社員のTOEIC平均点は850点近くまで上昇したという。最大の効果として、世界中から優秀な人材を雇用できるようになったことを挙げた。
2つ目は「楽天主義」と呼ばれる揺るぎない企業文化・理念の存在だ。これは楽天グループのあり方を明確にし、すべての従業員が理解し実行する価値観・行動指針となるもので、いわゆる社是やコーポレートフィロソフィーに相当するもの。楽天グループでは単に共有するだけでなく、“共感”することをスタートポイントに据え、共感から共鳴や共振を起こし、最終的にはコラボレーションが生まれることを目指している。
ちなみにコラボレーションのベースには相互信頼も必要だが、その構築を一次的に阻んだのがコロナ禍だった。平井氏は現地現物主義で「10回のウェブ会議より1回の面直会議、10回の面直会議より1回の飲み会」と考えるそうだ。「リモートワークでは生産性は高まった一方で、クリエイティビティは大きく失われたのではないでしょうか」と振り返った。
全世界に約6,000人、グローバルな開発組織
楽天グループはグローバルな開発組織を有し、全世界に約6,000人のエンジニアがいる。日本国内だけでも約3,700人がおり、うち6割が外国籍だ。
アジアだとインドのベンガルール、中国の上海や大連などにオフィスがあるが、これらはよくあるオフショア開発センターではない。イノベーションハブ、あるいはキャプティブセンターとしての機能を果たし、プロダクトのデザインから開発、運用までを担う。また、北アイルランドのベルファストにはブロックチェーン技術に特化した研究開発組織を設置。テクノロジー創出のための研究機関「楽天技術研究所」は東京、シンガポール、パリ、ボストン、ベンガルールなどにある。
こうした多様性のあるグローバル組織で目指すのは「パーソナライズされたデジタルコマースエクスペリエンス」だと平井氏。具体的にどう実現していくのか、ハンバーガーのイラストを用いて図解した。
まず、長年運用してきた楽天IDや楽天ポイントなどのメンバーシッププラットフォームがハンバーガーの主役であるパテ。具材のチーズには楽天カードや楽天銀行、楽天Edy、楽天キャッシュといった多様な決済手段を、トマトには70以上のサービスを位置付けた。ベースに敷いたレタスはモバイルネットワークで、これが多様なOTTサービスを支える土管の役割を果たす。
平井氏は「ハンバーガーの形にしてギュッと組み合わせると、これまでにない価値を提供できるはず。それをパーソナライズした形で提供していくことが我々の使命です」と力を込めた。