Oktaの獲得可能な最大市場規模は800億ドル
「Oktaにとっての日本市場での成功の鍵はパートナーシップ戦略です」とヒュースタッド氏は語る。
Oktaは、「TAM」(Total Addressable Market)と呼ばれる「獲得可能な最大市場規模」を800億ドルと見積もっている。日本円では、約10兆円を超える。現在は急速に成長しているが、まだTAMとのギャップはあり成長余地は大きい。そのギャップを埋めるために、パートナー企業との連携が最も重要な戦略だというのだ。
Oktaのパートナー企業との協業のコアとなるのがアイデンティティ管理だ。アイデンティティ管理とは、IDやパスワードの管理に加え、様々なSaaSやクラウドサービスの連携と活用を容易にし、セキュリティを確保する役割を果たしている。リモートワークの増加により、その需要は急増した。クラウドサービスのID管理をIDaaS(Identity as a Service)と呼ぶ場合もあるが、OktaはID管理をより広い分野に適用する意味で「アイデンティティ」と定義している。
このアイデンティティ事業は、2つの柱に基づいている。1つは「ワークフォース・アイデンティティ(Workforce Identity)」であり、従業員がシステムにログインするためのアイデンティティ管理。もう1つは「カスタマー・アイデンティティ(Customer Identity)」であり、企業の顧客向けのアイデンティティ管理だ。
アイデンティティを中心に、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」、「クラウド移行」、「セキュリティ」といった幅広いビジネスをパートナー企業が展開することを支援する。CMOやCDOのIT担当部門、CPO(製品責任者)の製品担当部門、CTOのアプリ開発担当部門、CIO、CISOのセキュリティ担当部門などが導入対象となる。
2020年の日本での法人設立から3年、アイデンティティにおける年間成長率は100%以上の倍増を達成。2023年3月時点での月間認証数は1.6億回以上であり、Okta Japanの設立以降の成長率は6倍以上に達した。現在のパートナー企業数は64社であり、1/3が過去1年間で増加したパートナーで、売上への貢献率は60%以上となっている。
「米国の本社からも日本市場での期待値は高い。日本は米国と違い直販の率は低く、パートナーとの協業こそがスタンダードで、市場での成功条件であることを、Okta本社も十分理解しています」(ヒュースタッド氏)
パートナーとの協業に求める6つの活動の価値
Oktaがパートナーとの協業で重視しているのは「パートナー自身の事業拡大」だ。
パートナー企業がOktaの製品を単体で販売するのではなく、Oktaのアイデンティティ製品をコアに据えて、幅広いソリューションを展開してもらうことが重要と考える。「たとえOktaの製品が案件のトップラインではなかったとしても、DXやクラウド移行、セキュリティなどの提案には、アイデンティティ管理が必要。アイデンティティをコアにしたソリューションを提供することで、パートナーのビジネスが拡大していくことが、Oktaにとっての価値をもたらすからです」とヒュースタッド氏。
「ゼロトラストセキュリティという分野では、単にアイデンティティだけではなくて、複数の製品が組み合わされて使われる。そこではパートナー独自のセキュリティのケイパビリティを発揮していただく中で、Oktaの製品を組み込んでいただく」
このため、ZscalerやCrowdStrike、AWSなど他社製品と統合された形の「ベスト・オブ・ブリード」として提案できるクラウドインテグレーターとの協業を重視している。
Oktaがパートナー企業に期待する役割は、リーチ(市場への展開)、ケイパビリティ(専門能力)、スケール(広さ)。この3つを兼ね備えたパートナーの活動として、6つの活動を定義している。
- Find(見つける):ビジネスチャンスを見つけ出す
- Develop(育てる):アイデンティティをコアとしたプロジェクトを創出する
- Influence(影響を与える):顧客と深い信頼関係を有する
- Deliver(届ける):顧客が「成功」できるソリューションを提供する
- Manage(管理する):複雑なソリューションを顧客のために担う
- Transact(処理する):Oktaに代わって購買処理を行う
「これらすべての6つの活動すべてが重要です。こうした活動を元にパートナー様に対してのインセンティブを支払い、パフォーマンスに応じてペネフィットを享受してもらいます」(ヒュースタッド氏)