2023年9月5日、デル・テクノロジーズや日本NPOセンターなど5者は、「NPTechイニシアティブ」に係わる記者説明会を開催した。
会の冒頭、日本NPOセンターは「組織をより効率的に運用し、事業を効果的にするためにはITが欠かせないが、多くのNPOで根付いていない」と課題を提起。日本NPOセンターは、2019年よりIT人材育成を目的とした「STO創出プロジェクト」にNTTデータなどと取り組んでいたが、2023年9月からはNTTデータグループに加えて、デル・テクノロジーズ、インテル、TISなどIT企業の4社と協同していくと発表した。
具体的には、2019年から取り組んできたSTO創出プロジェクトを発展させる形で「NPTech(NonProfit Technology)イニシアティブ」として取り組んでいくという。日本NPOセンター 事務局次長を務める上田英司氏は、「ITに係わる人数、質ともに不足している。NPO側にはITを理解するための基盤がないなどの課題を抱えている中、新たにインテルとTISの2社に加わっていただき、2023年度には計4回の講座を提供していく」と説明する。
当初より参画しているNTTデータグループにおいては「サステナビリティ経営の中でCSVやCSRに取り組んでおり、今回のNP Techイニシアティブは『フィランソロピー』に係わる取り組みとして進めていく」と同社サステナビリティ経営推進部 シニア・スペシャリストの金田晃一氏が話す。NPOやNGOの中にデジタル技術が浸透していくことで既存の取り組みが活性化するだけでなく、新たなデータも発生していくために将来的な企業価値向上にもつながるという。
特にフィランソロピーにおける様相が変化していく傍ら、ITツールを利用したクラウドファンディングの実施や寄付者管理、チャットボットの活用など事業運営の効率化にも寄与していくと話す。加えて、NTTデータグループにおいてはリモートでのボランティア活動などで参画人数の増加も予想できるため、従業員の“事業化につなげる力”がより強化されていき、サステナビリティ経営で重要視されているCSV向上にもつながっていくと金田氏。他にもIT企業4社が協同することによるコレクティブ・インパクトの創出、社員によるプロボノへの参画といった好影響があるとした。
次に、デル・テクノロジーズ Japan CDO Office ESG エンゲージメントジャパンリード 松本笑美氏が登壇。同社はこれまでESG戦略において再生材利用やD&Iの推進などに取り組んできており、2023年現時点では「気候変動への対応」「循環型経済」「インクルーシブな職場環境」「デジタルインクルージョン」の4つに集約することができるとして、今回参画するNPTechイニシアティブの取り組みはデジタルインクルージョンに係わると話す。
同社では、これまでもNPOやNGOといった団体組織に対してデジタル化の支援や寄付などを行っている中、特に医療と教育を中心にデジタルアクセスの提供に注力。社員の75%が何らかのボランティアを年に1回行うことも目標にしてるという。なお、NPTechイニシアティブ参画においては、プロボノに着目しているとして「特にNPOにおけるIT活用状況を見たとき、海外での展開手法が日本ではマッチしないと感じている。プロボノという形で深く入っていき、デジタルインクルージョンにいかにつなげられるか、いかにIT企業4社が協同していくかがソーシャルインパクトの拡大を左右していく」と松友氏は述べた。
また、インテル 執行役員 パートナー事業本部 本部長 高橋大造氏は、NPTechイニシアティブへの参加を通してNPOのDX化、デジタル人材の育成に貢献したいとして「日本社会の課題としてサスティナビリティやデジタル人材育成などが挙げられている中、デジタル人材育成のための教材の提供などを軸に取り組んでいく」と説明。同社では、「Responsible」「Inclusive」「Sustainable」「Enabling」の頭文字をとった“RISE戦略”を掲げており、特にInclusiveという観点においてNPTechイニシアティブに参画していくとする。
昨年立ち上げた「インテル・デジタルラボ構想」において、市民のデジタル対応力を高めていくために教育機関へのSTEAM教育の浸透、企業・自治体などに対してはAI教育やDX/DcX研修を提供している中、今後はNPOへも同プログラムなどの提供などを進めていきたいとした。
最後に、TIS 企画本部 企画部 コーポレートサステナビリティ推進室 室長 芝村仁氏が登壇。同社はサスティナビリティ経営において社会貢献活動に取り組んでおり、NPTechイニシアティブに参画することで同社サービスが提供できない領域においてNPOなどを通じた支援を拡充していくという。これまで資金助成や若年層へのITリテラシー教育などに取り組んできた中、芝村氏は「誰もがデジタル技術の恩恵を享受できる社会の実現を目指す中、1社だけでは成し遂げることが難しい課題もあるため、NPTechイニシアティブを通して各社と協力していく」と締めくくった。
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