リコーブラックラムズ東京を支えるDX
デジタル複合機などドキュメント領域を中心に、ITサービスやコミュニケーションまで幅広いデジタルソリューションを展開する株式会社リコー。同社はオペレーショナルエクセレンスの実現を目指し、「プロセスDX(プロセスの最適化とデジタル技術の活用)」を実践している。この取り組みの成果は、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2022」にも選定された。
リコーは、OAメーカーから「デジタルサービスの会社」への生まれ変わりを目指している。そのためには社員1人ひとりが自律的にイキイキと働く必要がある。そしてこれを実践するために、さまざまなデジタル技術を活用し社員自らが業務プロセスの改善を続けるプロセスDXを進めている。このリコーのプロセスDX推進のための組織が、プロフェッショナルサービス部 ワークフロー革新センターだ。各業務現場が自律的に業務のDX化に取り組めるように、ワークフロー革新センターは伴走型で支援している。デジタル技術を用い新しい仕事のやり方を全社に展開する。そしてデータの利活用支援やプロセスDX人材の育成、また社内で実践した成果を顧客の課題解決の提案にもつなげている。
伴走型DX推進の支援対象は、同社のさまざまなビジネス現場だけではない。ラグビー部であるリコーブラックラムズ東京も、他の業務部門と同様にDXを進めている。「各部門にDXを進めるための窓口担当者を置き、課題をヒアリングして現場と一緒にDXの推進を考えています」と言うのは、プロフェッショナルサービス部 ワークフロー革新センター EDW開発室 ソリューション開発2グループの朝倉 薫氏だ。ラグビー部のブラックラムズ東京にも担当者を置き、ヒアリングを行った。その結果、デジタル技術を使えば効率化が図れるところが見つかる。
ブラックラムズ東京では、既に2017年秋から電子黒板を導入しチームミーティングやセットプレーの傾向分析に活用するなど、デジタル技術を活用した働き方改革を推進してきた。新たなヒアリングの結果、デジタル活用で効率化できると考えたのが、試合データの加工分析の業務だった。
ブラックラムズ東京が加入している「ジャパンラグビー リーグワン DIVISION1」には12チームが所属している。シーズン中は主に毎週土曜日、日曜日に公式戦6試合が実施される。ブラックラムズ東京では週次で行われるチームミーティングに向け、次の対戦相手の試合データを分析し、レポート化して監督やコーチ、選手に情報提供している。そのためのさまざまな準備からレポート作成までを行うのが、チーム専属のスポーツアナリストの役割だ。
リーグワンでは、公式試合が終了すると各試合のデータがWebサイトから提供される。アナリストは提供されたデータをダウンロードし、分析ができるように加工する。データの加工は主にアナリストによる手作業で行われ、1試合につき約45分の時間が必要だった。また試合後にサイトでデータが公開されるタイミングはまちまちで、アナリストはサイトに度々アクセスし公開されているかを確認しなければならなかった。データ取得までに多くの待ち時間があり、アナリストには大きな負担だった。これらの状況があるため、実施された全ての試合データを分析するのは難しく、次の試合までには直近で対戦する相手チームの試合のみを分析するに止まっていた。