クラウドへのデータ移行の課題は「長時間化」
上水口氏は2008年にアシストに入社し、一貫してデータベースに関わる技術領域に携わっている。Oracle Databaseのシングル導入から入り、Oracle Database Applianceを担当。2020年からはOracle Cloud Infrastructure(OCI)やアマゾン ウェブ サービス(AWS)などのクラウド環境、PostgreSQLやEDBも扱うという。このような経歴を持つ上水口氏が、最近関わることが多いのがクラウドへのデータ移行だ。その際に課題となるのが「移行作業の長時間化」、それにともなう「システムの停止の長時間化」だという。
データ移行を容易にするツールは、オラクルから各種提供されている。とはいえ「OCIで用意されている新しいツールの利用はまだそれほど多くありません」と上水口氏。そのため、事例や実績の情報も少ないと話す。そこでアシストでは、様々なOCIのデータ移行ツールを検証し、ユーザーが目的に適したツールを選択する判断材料を提示しようと考えた。
システム停止時間を短縮する新しい移行ツール
従来のデータ移行では「Data Pump」や「Recovery Manager(RMAN)」を使うのが一般的だ。これらを使う方法は、OCIへの移行でももちろん有効である。しかし、今回取り上げる新しいOCI独自の移行ツールは、従来のものよりも簡単に移行が可能だと上水口氏は強調する。
定番とも言えるData Pumpを使う移行手順では、オンプレミスのデータベースでデータをエクスポートし、ダンプファイルを生成する。そこで得られたダンプファイルをOCIにアップロードし、OCI上でデータベースにインポートする。つまり、移行には3つのステップが必要だ。「このとき大規模なデータベースだと、データのエクスポートに時間がかかり、さらにダンプファイルも大きくなるのでOCIへの転送時間も長くなります。当然インポートにも時間がかかり、システム停止時間も長くなります」と上水口氏はいう。
一方、RMANの場合は、バックアップを事前に取得しそれを新環境でリストアする。システム停止は、その後の差分を適用する間だけだ。Data Pumpよりも停止時間は短くなるが、大規模なデータベースでは数時間の停止が必要となるケースもある。
これらに対し、OCIで提供する新しいツールでは作業のほとんどが事前に実行可能で「実際の切り替え時間、つまりシステム停止時間は極めて短くできます」と上水口氏は語る。OCI独自の移行ツールには、「OCI GoldenGate(OCI-GG)」「Zero Downtime Migration(ZDM)」「OCI Database Migration(DMS)」の3つがある。