アクセンチュアは、最新調査「製造業におけるレジリエンス」を実施し、その結果を発表した。
調査概要
- 調査期間:2023年1~3月
- 調査対象:エンジニアリング、生産、サプライチェーン、オペレーション部門の経営幹部1,230人
- 対象国:日本、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、メキシコ、スペイン、スウェーデン、英国、米国
- 業種:航空宇宙・防衛、自動車(OEM)、自動車(付帯設備・部品)、化学、消費財・サービス、ハイテク、産業機器、金属・鉱業、ライフサイエンス、石油・ガス(上流・下流)、公益事業
同調査によると、企業は地域のサプライヤーとの関係や生産施設を増強し、混乱に強い体制の構築に取り組んでいることが明らかになった。2026年までに主要品目のほとんどを地域内のサプライヤーから購入する計画の企業は65%に上り、現在の38%から増加することも判明。85%の企業が2026年までにほぼすべての自社製品を同じ地域で生産・販売することを計画しているという(現在は43%)。
また、不安定な社会情勢において地域内で調達や生産を完結させることが重要であるものの、持続的なレジリエンスを得るには不十分であると解説。企業は、デジタル技術活用の度合い(デジタル成熟度)を高めてデータやAI、デジタルツインなどのソリューションに投資することが肝要だという。これにより企業は、不安定な市場動向においても再構成可能な供給網や自律した生産体制を構築することが可能となり、柔軟で持続可能な製品開発や、製造現場でのリアルタイムな意思決定が可能になるとしている。
近年、地政学的な変化や異常気象、テクノロジーの進歩、資材や人材の不足など、破壊的な出来事が急増しているとのこと。こうした世界の中で、企業がレジリエンスと長期的成長を維持することは極めて困難だという。
- 2021年から2022年にかけて、企業はエンジニアリング、供給、生産、オペレーションに支障をきたし、年間1.6兆ドルの収益を逃している
- 一方で、レジリエンスに優れた企業(25%)の年間売上高は、最も脆弱な企業(25%)よりも3.6%高くなった
また、企業は2023年に供給・生産設備のデジタル化、自動化、移転のために平均10億ドルを投資し、2026年にこの額は少なくとも25億ドルに増加すると予想されている。同調査の一環として、同社はエンジニアリング、供給、生産、オペレーションのレジリエンスを0~100の尺度で測定するモデルを開発。その結果、平均スコアはわずか56だったとしている。
同調査では、企業がレジリエンスを強化するために注力すべき3分野を挙げている。
可視性の向上
企業はサプライチェーンや生産プロセスを予測可能で自律的にする必要がある。たとえば、サプライチェーンを一気通貫したコントロール機能でプロセスを監視し、様々なシナリオをリアルタイムで分析することで問題を早期に発見し、修正することが可能になる。現在、リアルタイムに近いアラート機能を備える企業はわずか11%で、78%は影響を完全に把握するまでに少なくとも1週間を要しているという。
設計におけるレジリエンス向上
初期の開発プロセスから可視化する活動を組み込むことで、企業は製品、プロセス、作業方法を正しく把握することが可能。たとえば、製品設計者やエンジニアはデジタルツインを使ってプロトタイプの問題や欠陥を特定して解消し、生産開始前に設計を修正できるとしている。
新しい働き方の推進
企業は、データ、AIなどのデジタル技術に関する社員のスキルアップを図ることで、予測・視覚化ツールを使い、現場でデータ主導の意思決定を行えるようになるとのこと。現在、幅広いスキルを持つ人材やデジタルリテラシーを備えた社員を抱える企業は17%にすぎず、68%が2026年までにそうした人材を確保する予定だと回答しているという。
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