アクセンチュアは、年次レポート「アクセンチュア ライフ トレンド2024」を発表した。同レポートによると、世界の半数の人は、結婚や学位の取得を後回しにする、また仕事の安定や引退も検討するなど、人生の目標を大きく転換させているとのこと。また48%の人々は、自らの将来の計画を1年以上先まで立てない、あるいはまったく計画しないと回答しているという。
急速なテクノロジーの進歩による環境の変化を受け、生活者の考え方も変化。これまで当たり前とされた常識を見直し、再構築して自らの居場所を見つけようとしており、こうした動きは社会を揺さぶり、企業に不確実性と脆弱性をもたらしているという。アクセンチュア ライフ トレンド2024では、企業が顧客からの共感の創造とビジネスの成長を両立させるべく、5つの世界的かつ大局的なカルチャートレンドを解説している。
1. 愛を取り戻せ
顧客体験と収益成長には相関関係があるという考えのもと、企業はあらゆる意思決定の中心に顧客を据えてきた。しかし、今や経済的な理由で企業はコスト削減を余儀なくされ、値上げや品質の低下、サブスクリプションの乱立、顧客サービス品質の低下など、様々なチャネルで顧客との間に摩擦を引き起こしている。顧客の半数近くが、カスタマーサービスへのつながりづらさや不十分な対応に不満を感じているという。
品質低下や内容量の減少(シュリンクフレーション)、サービス品質の低下(スキンプフレーション)、過度なサブスクリプション化などが重なり、ブランドは静かに信頼を失いつつある。こうした傾向の中心にあるのは、企業と顧客の認識のズレだという。企業にとってはこれらが生き残りの施策であっても、一部の顧客は貪欲さからくる施策だと捉えているとしている。
2. インターフェース革命
会話型AIは、調査対象者の77%が「馴染みがある」と回答する広く認知された技術である。生成AIの登場で、インターネットにおける体験は単なる取引的な体験から個人的な体験へと進化。大規模言語モデル(LLM)によって知的で双方向の会話が成立し、「○○が欲しい」ではなく、「○○をしたい」に対する解決策を提示することが可能になったという。
生活者は、おすすめ商品の提示(42%)、タスクの遂行(44%)、健康や医療のアドバイス(33%)といった目的でChatGPTなどの対話型AIを使うことを快適だと感じている。対話型AIは今後、インターフェースの在り方を大きく変え、ブランドは対話型AIインターフェースを通じて顧客理解を深め、顧客に関連性の高い製品、サービスや体験を提供できるようになるとのこと。また、顧客理解に適応したレスポンシブなブランド開発に着手する企業も出てくるだろうと同社はみている。
3. 創造性の逆境
かつてクリエイティビティの主な目的は、想像力や人とのつながりを通じて感情的な反応を引き出すことにあった。しかし今では、アルゴリズムやテクノロジーがクリエイターと観客の間に介在するようになり、本気で勝負に勝ちにいかなければ、埋もれて顧客に見つけてもらえない状況が生まれている。エンターテインメントに目を向けると、観客は続編やスピンオフといった過去の延長線上にある作品に飽き飽きしているとのこと。また35%がどのブランドも似通ったアプリデザインで区別できないと回答し、18歳から24歳に限るとその値は40%近くに上昇する。文化の停滞期が訪れているといえるのかもしれない。
凡庸さが溢れているという課題は自然には解決しない。むしろ、クリエイティブを生み出すプロセスで生成AIの果たす役割が大きくなれば一層悪化する可能性もある。賢明な企業はここに商機を見出し、独創性やクリエイティブな人材へ投資し、凡庸さの中で際立つ存在となるだろうと同社はみている。
4. テクノロジーの飽和点
人とテクノロジーとの関係は重大な局面を迎えている。生活者の3分の1近くが、テクノロジーによって生活がシンプルになる一方、複雑にもなったと回答。テクノロジーに追い立てられ、ウェルビーングに悪影響を与えていると感じているという。
企業は、テクノロジーが生活にどのように組み込まれ、人々に新たな時間やスキルを強要していないかなどについて注意深く見極める必要があるとのこと。ブランドとの接点において、テクノロジー活用の有無を選択できるようにすることで、顧客に自己決定権を取り戻したと感じさせ、信頼できるパートナーとして認められるだろうと同社は述べている。
5. 成功神話の解体
人生におけるニーズやチャンス、そして様々な制約によって、生活者像が大きく変化している。人々はこれまでの常識に異を唱え、新しい考え方、行動、生き方を形作っており、従来の当たり前が解体され、新時代への再構築の10年が始まったようだ。この変化に基づくシステムやサービスへの影響は、広範囲に及ぶという。
たとえば、今や人々は1年未満の単位で人生を考えており、48%の人は、1年先までの計画しか立てない、もしくはまったく立てていないと回答。過去3年間で、結婚(30%から21%)、学位の取得(30%から24%)、そして実家を出ること(23%から17%)といったライフイベントに関する重要度も低下している。
こうした新たな価値観は、製品やサービスに対する見方を変えるとのこと。従来の常識にとらわれずに自分らしい道を歩もうとする人を支援するため、柔軟に適応してシームレスな体験を作り出す企業は、進化する生活者の共感を失うことはないだろうと同社はみている。
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