PwCコンサルティングが6月17日に発表した「生成AIに関する実態調査2024春」の結果から、日本企業の生成AI活用の現状と今後の展望が明らかになった。調査は2024年4月に、売上高500億円以上の国内企業912社のAI導入担当者を対象に実施された。
高い関心を維持しながら試行錯誤期へ
生成AIに対する企業の関心は高く、「検討以上のステップの活動に入っている企業」は全体の9割に上った。ただし、調査開始以降継続して高い関心を示しつつも、「活用中のステータスに入っている企業」の割合は約9ポイント増加するにとどまり、本格導入には至っていない状況だ。
PwCコンサルティング合同会社 執行役員パートナーの三善心平氏は、「よく業界構造を根本から変革するといわれるが、日本企業は足元のチャンスとして捉えており、まずは自社ビジネスの効率化行動に取り組んでいる」と指摘する。業界別の活用推進度合いを見ると、通信・テクノロジー業界が先行する一方、医療・ヘルスケア業界は「停滞傾向」だという。
成果に対する期待は二極化
生成AIが当初の期待に応えられているかどうかについては、企業間で認識の差が生じている。「期待を大きく上回っている」と回答した企業は9%だったのに対し、「期待を下回る」「期待と大きくかけ離れている」と回答した企業は18%に上った。
期待を上回った企業の特徴としては、1)より意思決定や施策検討に踏み込んだ活用をしている、2)テキスト系以外の生成AIも活用している、3)全社導入に加え業務特化の利用も進めている──などが挙げられる。導入時期が早く、注力アジェンダとして大きな予算をつけて推進している企業ほど、生成AIに対して高い評価を示す傾向にあるようだ。
一方、「期待を下回る」と回答した企業の多くは、足元の業務効率化を目的に導入しており、AIガバナンスの整備にも消極的だ。期待を上回る効果を得るには、“業界構造を根本から変革するチャンス”ととらえ、経営アジェンダに組み込んだ推進が必要とみられる。
三善氏は、生成AIを活用していく上で重要なポイントとして以下の3点を挙げた。
- 企業独自の価値を再認識すること
- ドラスティックな変革を持続させるためのトランスフォーメーション
- 人事戦略や従業員のキャリア形成への影響を見据えた対応