Nutanix AHV―10年の進化とエンタープライズ市場での台頭
Nutanixは、ストレージを使わずにサーバーだけで仮想化環境を実現するハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)の世界的リーダーだ。自社のソフトウェアと親和性の高いものとして「Nutanix AHV(Acropolis Hypervisor:以下、AHV)」というハイパーバイザーを提供してから2024年で10年が経つ。この間、顧客のニーズに沿ってNutanixはどのように変化してきたのか。
ハイパーバイザーの先駆けはVMwareであり、Nutanixはその10年後にAHVを立ち上げた。当時、ハイパーバイザーに関する多くのオープンソースの作業が進んでいたことから、AHVはKVM(Kernel-based Virtual Machine)に基づいて構築されたという。Nutanixはハイパーバイザーを個別に販売せず、プラットフォームに含める方針を取ったため、Nutanixプラットフォームを採用した顧客はAHVとVMwareのどちらを利用するか選択できる余地が生まれたのだ。
ラマスワミ氏は「この10年間で、AHVは多方面に進化し、今日では真のエンタープライズクラスのハイパーバイザーとなった」と振り返る。エンタープライズが求める数々の機能を備え、アプリケーションベンダーや他のコンポーネントから必要なエコシステム認証も取得している。
多くの技術パートナーがAHVをサポートしており、そこにはバックアップやエンドポイントセキュリティ、ネットワークセキュリティなども含まれている。同時に、AHVはコア技術への投資を続けており、SAPなどの大規模なインメモリワークロードの実行が可能だ。ラマスワミ氏は「過去10年間でこれらすべての面で取り組んできた結果、今日では70%のインストールベースがAHVを採用している」と語った。
VMware買収による混乱をCEOはどう見るのか
今回の年次イベントでは、Dell Technologiesとの「Nutanix Cloud Platform for Dell PowerFlex」提供や、EnterpriseDB(EDB)との提携が発表された。Nutanixはかねてより様々な企業とパートナーシップを拡大しており、2023年にはCiscoと戦略提携を締結、その前にはLenovoやHPEとも協業している。
Dell Technologiesとの連携について、ラマスワミ氏は「我々の哲学は、顧客ができるだけ多くのプレーヤーからNutanixの製品を利用できるようにすること。今回の連携は、我々にとってもDell Technologiesから購入したい顧客にとってもメリットがある」と語る。
これまでNutanixは外部ストレージと連携していなかったが、BroadcomがVMwareを買収し、VMwareのライセンス体系変更を変更したことで状況が変わったとラマスワミ氏。「多くの顧客が既存のストレージを活用してNutanixと連携できるかを尋ねてきている。そのために、まずはDell PowerEdgeから外部ストレージシステムのサポートを始めることにした」と狙いを説明した。
なお、VMwareのハイパーバイザーをAHVに置き換えるには、HCIに移行する必要がある。ラマスワミ氏は「これこそが、外部ストレージパートナーとの連携を開始した理由だ」と強調。「顧客がDell PowerFlexの外部ストレージを使用している場合、スタンドアロンのAHVハイパーバイザーを展開できる。現時点ではサポートできる構成の数はまだ限定されているものの、今後は他のIPストレージベンダーもサポートする予定だ。従来はHCIを採用する必要があったが、今回の提携によって多くの選択肢を提供できるだろう」と見通しを示す。
また、EDBはエンタープライズ向けPostgreSQLの最大プロバイダーの一つだ。同社との提携については、モダンなアプリケーションで従来のOracleからPostgreSQLへの移行が進んでいることが背景にあるという。ラマスワミ氏は「我々にはデータベース管理ソリューションやサービスがあり、EDB PostgreSQLとNutanixを一緒に展開することで、素晴らしいソリューションを提供できる」とした。
BroadcomのVMware買収による混乱は、Nutanixにとって好機となるのだろうか。ラマスワミ氏は「VMware買収による多くの懸念やマイグレーションの方法などが話題になっている。Nutanixも多くの顧客とこうした話をしており、日本でも話をすることが増えている。日本の顧客はあまり懸念を声高に示すことはないが、今回は強く表明していることに驚いた」と話す。こうした状況を踏まえて、世界中の顧客やパートナーと連携し、この状況に対応するために多くのプログラムを導入していると説明。全体的な方針としては「短期的な取引関係ではなく、顧客との長期的な関係を築きたい考えている」ことを明かした。