グローバルでベストプラクティスの横展開を進める武田薬品、その体制とは
武田薬品工業は2024年9月5日、同社がグローバルプログラム「Factory of the Future」の一環として進める製造DXの取り組みについて発表した。
Factory of the Futureとは、医薬品製造の効率性と安定性の向上、品質・コンプライアンス強化、付加価値の創造を促進させる、武田薬品工業のグローバルプログラム。①グローバルでの「標準化」と、②グローバルでの「ベストプラクティスの現場適用」を、以下3つの側面で進めているという。
- デジタル教育の強化と変革の推進
- 生産性の追求
- デジタルと自動化
上記3つのうち、今回の発表では主に「デジタルと自動化」に関する取り組みが紹介された。デジタルと自動化について、同社は次のように説明する。
データサイエンスとデジタル技術への投資を加速させ、製造プロセスやオペレーションのあらゆる側面でDXに取り組み、自動化、AI、デジタルツイン、ビッグデータ解析、データの統合と民主化、予測能力、そしてあらゆるコラボレーションとガバナンスを強化していく取り組み。
こうしたAIや自動化の力により、従業員がより価値を創造する業務に注力できるようになることで、患者が必要とする医薬品をより迅速に安定供給することを目指しているのだという。
同社の石丸宏氏は、Factory of Future実現に向けた“イノベーション創発”と“グローバル展開”における取り組みを紹介した。まず同社は、各工場の要望を効率的に取り込み、グローバル全体に展開するプロセス「デジタルイノベーションフレームワーク」を構築。これは、いかに効率的にイノベーションを生み出し、無理・無駄をなくし、社内で生み出されたデジタルソリューションなどを横展開していくかをポイントとした、武田薬品工業がグローバル共通で実装しているフレームワークだ。
「たとえば、ある工場で生産性を改善するために解決すべき課題を発見しました。しかし、社内にそれを解決するためのソリューションがまだ存在しないとしましょう。すると、いきなりデジタルソリューションの開発に着手するのではなく、『もしかしたら同じニーズが他の工場にも眠っているのでは』と、一旦探ってみるのが武田薬品工業なのです」(石丸氏)
まずは、必要な情報を得るために情報を社内で上げていき、同じようなニーズがないかを探る。その際に、投資対効果のほか、戦略的な整合性、さらには「グローバルの他の工場で既につくろうとしているソリューションと、同じものをつくろうとしていないか」などをチェックする体制になっていると石丸氏は紹介する。
こうしたチェックを通過して、初めて新たなソリューションの要望が開発チームに投げられるという。すると、次にその新ソリューションの情報が、同社内の「Global Market Place」というサイトに載せられる。
このマーケットプレイスについて、石丸氏は「武田薬品工業の社内向けAmazonのようなもの」だと説明。各工場で開発され、他の工場でも適用できる可能性のあるソリューションがサイト上に集約されているという。こうすれば、各拠点が同じようなソリューションを開発してしまい、コストや複雑性、開発業務が重複してしまう事態を防ぐことができる。現在、サイト上には約180のソリューションが並んでおり、日本の工場発のソリューションは約12~13ほどあるとのことだ。