中国地方でスーパーマーケットを運営するマルイと、日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)は、流通業向けデジタルサービス・プラットフォーム(IBM Digital Services Platform:DSP)の「AI需要予測」を活用した実証実験を、2023年11月から2024年2月までの4ヵ月間実施した。
実証実験の結果、1ヵ月の客数予測精度(店舗平均)が90%を超える高い精度を達成。また、販売機会向上と廃棄ロス削減につながったという。
この結果を受け、マルイは2024年3月から7月まで一部の店舗での実運用を行い、1店舗あたりの発注時間の50%削減の効果がさらに確認できたため、2024年9月からAI需要予測を全店舗へ正式に導入することを決定した。
導入サービス
今回、「流通業向けDSP」のAI需要予測のアナリティクス技術を活用し、天候や催事など店舗売上影響要因であるコーザルデータや顧客の販売データの傾向分析を導入。すべての商品を一律に運用するのではなく、最適な予測モデルを商品ごとに自動で適用する予測手法によって細かな対応を可能にしたという。
日本IBMは、今回の実証実験において、流通業界の知見やAIとアナリティクスの専門知識に加え、流通業向けDSPを活用したIBM Cloud基盤上でのAI需要予測システム構築、およびAI予測結果を実運用で活用するための併走支援を実施した。
AI需要予測を活用した実証実験の効果(2024年7月まで)
- 対象カテゴリー:和日配(豆腐、納豆など)、洋日配(牛乳、デザートなど)
- 実施店舗:5店舗(ノースランド店、総社店、湯郷店、両三柳店、安倍店)
- 使用データ:店舗情報、販売実績、商品情報、販促情報、コロナ情報、気象情報、カレンダー情報
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定量効果:
- 販売数予測精度:和日配96.3%
- 売上前年比:和日配102%
- 月額ロス率前年比:和日配97.5%
- 発注時間:各カテゴリーそれぞれ50%削減
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定性効果:
- 担当者の公休前の発注忘れの防止や従業員の休暇中の心労削減
- 定型業務量削減による店舗スタッフのモチベーションアップ
- 発注業務削減時間を高付加価値のサービス提供時間への変換による店舗活性化
- 欠品状況の可視化および定番商品の品ぞろえの改善
マルイと日本IBMはこれらの成果を踏まえ、今後、部位が多く予測の難しい精肉や惣菜、インストアベーカリーへのAI需要予測の展開と製造計画への利用を検討しているという。さらには時間帯別の客数予測を活用した人員計画最適化を図り、スーパーマーケットの店舗管理におけるデジタル・トランスフォーメーションを推進していくとのことだ。
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