「HR SaaS」活用の裏で発生する、アカウント管理の現状と課題
一人ひとりの能力や知識、経験などを資本とし、それらを最大限に引き出し活用することで、持続的な企業価値につなげていくことが「人的資本経営」の醍醐味だ。
人的資本経営では、社内に存在する「ヒトに関する情報」が最大の“資産”であり、“武器”となる。日本でも、大手企業を中心に人的資本の可視化や分析を通して、人材戦略へと横展開すべく、あらゆる人事データの取得を試みている状況だ。
その際、ビジネスプロセスの効率化やコスト削減を目的として、各業務領域に特化したさまざまなSaaSが導入されている。国内では平均8.7個、海外では平均110個ものSaaSが導入されているという。海外におけるSaaS導入数の推移を見ると、今後国内においても導入数は急速に拡大する可能性があるだろう。
既に企業のSaaSアカウントは増加傾向にある。特に部署やプロジェクトの数が多くなりがちな大手企業においては、管理すべきアカウントが急速に増えているのだ。
そして、管理するアカウント数が増えたために、大きく3つの課題が生まれていると筆者は考えている。
1つ目は、「アカウント管理を複雑化させてしまうこと」だ。
これは、アカウント数の増加により、入退社にともなうアカウント発行・削除、役職や部署変更時にともなう権限変更など、運用コストが指数関数的に増えてしまうことを指している。
2つ目は、「コスト管理に困難が生じてしまうこと」。
これは、使用されていないにも関わらず、料金が発生しているSaaSアカウントが“コストの無駄”を生んでいるような状況だ。
3つ目は、「業務効率の低下を引き起こしてしまうこと」。
業務ごとに異なるHR SaaSを使用すると、UIが異なるアプリケーションを使い分けることになる。そのため、従業員からの問い合わせが増えたり、管理者自身も各システムを理解して活用できるまでに時間がかかったりしてしまう。
これら3つの課題が「HR SaaSを導入したにもかかわらず、意図した業務効率化が実現できない」という事態を招いてしまうのだ。