つながりを持てないコロナ禍入社、情熱をコミュニティという形に
SAPのユーザーグループであるJSUGで、若者が自主的におもしろい活動をしている──そんな噂を聞いて取材を申し込んだところ、アポは夕方になった。後になってわかったのだが、JSUG Next-Gen Boost(NGB)は業務時間外の活動だからだ。夕方の閑散としたオフィスで出迎えてくれたのは、川邉未来さん、木村優希さん、小泉隆太朗さんの3人。
NGBが立ち上がったのは2022年5月──ちょうどコロナが明けるころだ。実際に、コロナ禍はNGBの誕生に大きく影響している。Co-Leaderを務める川邉さんは2021年入社、NGBを立ち上げた経緯について、次のように説明する。
「無限大の可能性を感じ、熱い思いを抱いて入社しても、コロナ禍ではパソコンの前に座り、“画面に映る顔”という形でしか同僚や先輩とつながれませんでした。お客様とも画面越しです。熱い思いがあったのに、目の前の仕事に忙殺され、相談できる相手もいない……そんな人たちが多かったのです」──3、4年前を思い出すとたしかにそうだ。
小泉さんも「画面をオンにするので顔はわかりますが、背の高さや体格はわかりません。無駄話もできず、業務の説明だけをして終わり、という感じでした」と当時を振り返る。
そこで、「楽しい場所、集まることができる場所を作ろう!」とNGBを立ち上げたという。
川邉さんは入社前にインターンとしてSAPで働いていたため、リアルで構築した人間関係や勘があった。先輩がやっていたという異業種交流会の存在、JSUGとの関わりなどをたどり、上司やJSUGの理事などに構想を相談していく中で、優秀な若手として後輩の木村さんを紹介してもらい、その思いや構想から具体的なアイデアを共に形にしていったという。
中でも、現在JSUGの会長を務めるトラスコ中山の数見篤氏(取締役 経営管理本部長 兼 デジタル戦略本部長 兼 オレンジブック本部長)の支援は大きかった。「日々の仕事の中では、生産性や効率性を追求することにばかりに目を向けがち、それは大事なことではあるけれど、人としての魅力や人間性を高めていくためには、無駄と思えるようなことや、遊び、童心に帰ることの大切さも持ち合わせてほしい、と教えていただきました」と木村さん。
また、立ち上げにあたって川邉さんには、もう1つの思いがあった。「(自分が所属する)SAPのビジネスを長い視点で考えたとき、ユーザーやパートナーともっと距離を近くしたい、若いうちに仲良くなって、その人たちが意思決定層になったときに一緒におもしろいことをしたい」という情熱だ。だからこそ、SAPの枠を超えたつながりにするため、JSUGの中で若手コミュニティを作る。そうして、NGBが立ち上がった。