アイデンティティ管理からアイデンティティ・セキュリティへ
Oktaの創業者兼CEO トッド・マッキノン氏は、年次イベント「Oktane 2024」(10月15-17日、ラスベガス)の基調講演で、「Oktaは毎月30億件以上のアイデンティティ攻撃を阻止しており、その内容はクレデンシャルのスタッフィング攻撃、ボット攻撃から、広範囲に及ぶ組織的な攻撃まで多岐にわたる」とサイバー脅威の現状を明らかにした。
こうした脅威の深刻化を受け、Oktaは事業の軸足をセキュリティへと移行させている。マッキノン氏は「私たちの役割はクラウドを支えることから保護することへと進化した。アイデンティティ管理からアイデンティティ・セキュリティへ。これは脅威の高まりに対応する必然的な変化だ」と事業戦略の転換を語る。
昨年の自社へのサイバーインシデントを教訓に、Oktaは「Okta Secure Identity Commitment」を表明。「過去1年間で、私たちは100万時間以上をセキュリティに特化した取り組みに投資してきた」とマッキノン氏は述べ、組織を挙げたセキュリティ強化への取り組みを強調した。この投資は、製品の開発からインフラストラクチャの強化、そして業界全体のセキュリティ標準の向上まで、幅広い領域をカバーしている。
生成AI時代の認証基盤を刷新 ─ 新標準IPSIE
アイデンティティセキュリティにおける最大の課題として標準化の不足を指摘したマッキノン氏は、「世界中でアイデンティティセキュリティの問題を解決するためには、膨大な標準化が必要」と述べ、「Interoperability Profile for Secure Identity in the Enterprise」(IPSIE)を発表した。
「すべてのアプリ、すべてのデバイス、すべてのワークロードが共通の言語を話す世界へと進む必要がある」というビジョンのもと、IPSIEは包括的な標準化フレームワークを提供する。その中核となるのが、SSO(シングルサインオン)とデバイスバインディングの統合だ。これにより、企業は従業員のデバイスとアイデンティティを紐づけ、より強固なセキュリティを実現できる。
リスクシグナルの共有と活用については、各システムやデバイスから得られるセキュリティ関連の情報を標準化された形式で共有し、リアルタイムでのリスク評価と対応を可能にする。これにより、特定のシステムで検知された脅威情報を、即座に他のシステムでも活用できるようになる。たとえば、普段と異なる地域からのアクセスや、不審な行動パターンを示すユーザーを検知した場合、その情報を関連するすべてのシステムで即座に共有し、適切な対応を取ることが可能となる。
さらに、ライフサイクル管理と権限管理の統合により、ユーザーの入社から退職までのアイデンティティ・ライフサイクル全体を通じて、適切な権限管理を自動化する。これは特に大規模な組織での人事異動や組織変更時の権限管理を効率化し、セキュリティリスクを最小限に抑える効果が期待される。マッキノン氏は「権限の過剰付与や、退職者の権限が残存するといった問題を、システマチックに防止できる」と説明する。