クラウドネイティブ化しても運用する『人・体制・組織』に課題……それらを解消する「CCoE」設立は必至
第2回:クラウドネイティブ運用の実践と組織ガバナンスの強化

ITシステムのクラウド移行により、企業はスケーラビリティと可用性の維持、クラウド特有のインフラ管理の複雑化、セキュリティとコンプライアンスの確保といった新たな課題に直面しています。これらの課題に対する具体的な解決策として、今回はインフラ管理の自動化やITアーキテクチャーのクラウドネイティブ化の方法を紹介します。また、各部門で乱立するクラウド戦略の統一、社員間のクラウドスキルギャップの解消、そしてクラウドコストの管理といった課題に対して、「CCoE」の役割が重要です。本記事では、クラウドネイティブ化がもたらすメリットやCCoE設立における課題、クラウド標準化によって実現するクラウドガバナンスなど、クラウド移行の成功の秘訣を探ります。
今後も続くクラウド活用の波。利用価値を最大化するには?
総務省の「令和5年 通信利用動向調査報告書(企業編)」(PDF)によると、国内企業でクラウドを「全社的に利用している」割合は50.5%で、「一部の事業所または部門で利用している」割合は27.0%です。これらを合計するとクラウドを利用する国内企業の割合は全体の8割近くを占めています。同調査では、クラウドサービス導入の効果があったと回答した企業の割合は87.9%であり、実際にクラウド活用を効果的に行えている企業が多いことは確かなようです。令和4年度の同調査(PDF)の結果が72.1%であることを踏まえると、日本における企業のクラウド活用が年々着実に進んでいることも伺えます。
企業におけるITシステム利用の本質は「ビジネス価値の最大化」です。そのために多くの企業がクラウドによってビジネスの差別化に注力していることを鑑みると、他社との競争優位性を確保するために今後もクラウド活用のトレンドは続いていくでしょう。

出典:総務省「令和5年 通信利用動向調査報告書(企業編)」(PDF)
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一方で、クラウドサービスは一振りであらゆるITシステムを変化させる“魔法の杖”ではありません。冒頭で示した通り、オンプレミスとは異なるクラウド特有の作法を理解してITシステムのアーキテクチャーを最適化しなければ、クラウドの価値を最大限に享受することはできません。そのためには、ITインフラストラクチャーからアプリケーションデザインまでITアーキテクチャー全体をクラウドネイティブに再設計する必要があります。
また、ITの技術要素だけを検討すれば良いわけではなく、新しい技術を活用するには企業組織の在り方も最適化することが必要で、クラウドの進化に追従できるアジャイルで弾力性の高い組織体制や文化の醸成も欠かせません。企業のビジネス価値を最大化するためにクラウド活用を行う上で、技術と組織体制の変革を包括的に検討することは不可避であると言えます。
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臼杵 翔梧(ウスキ ショウゴ)
キンドリルジャパン株式会社 シニアリード・クラウドアーキテクト プリセールスを主軸にITシステムのソリューショニング・提案・デリバリー・案件レビュー等を担当。クラウド、データ、AI領域で幅広い業界のITシステム構築の支援を行う。AWS Ambassadorに選出。AWS認定資格全種、Google ...
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