生成AI導入の課題と「RYOYO AI Techmate Program」
2024年10月29日、菱洋エレクトロは企業向け生成AI導入支援プログラム「RYOYO AI Techmate Program」に関する発表会を開催した。同プログラムは、企業が生成AI導入時に直面する投資、人材、技術的課題を解決するための包括的な支援を提供するものである。発表会では、菱洋エレクトロの青木良行氏をはじめ、NVIDIAの岩永秀紀氏、レトリバの田口琢也氏が登壇し、プログラムの詳細や各社の取り組みについて説明を行った。青木氏によれば、現在企業が生成AI導入時に直面している課題は、主に3つに大別される。
「数億から数百億円規模の初期投資に対する投資対効果の経営への説明責任、自社リソースだけでは対応できない開発時の組織体制、そして専門知識を持つ人材やスキルの不足が大きな壁となっています」(青木氏)
これらの課題に対応するため、「RYOYO AI Techmate Program」は3つの柱で構成されている。第1の柱である「RYOYO Test Lab」では、NVIDIA DGX H200をはじめとする最新のGPUインフラを備えた検証環境を提供する。企業は約2週間の期間で無償での利用が可能で、AIモデルの精度テストやリソース管理、NVIDIA Omniverseの検証などが行える。
第2の柱「RYOYO Techmate制度」では、生成AI導入に必要なソリューションを持つパートナー企業とのマッチングを実施。データセンター事業者のゲットワークスとの提携により、コンテナ型データセンターを活用した柔軟な導入支援、モルゲンロット、スタイルズ社とのパートナーシップによるワークロード管理やソフトウェア運用管理の支援も行う。
「都内では電力確保も課題となっているなか、コンテナ型データセンターを活用することで、企業は容易にAIビジネスをスタートできる環境を整えました」と青木氏は強調する。
NVIDIAとの強力なパートナーシップによる技術基盤の確立
NVIDIA パートナー事業部 事業部長の岩永氏は、「NVIDIAは単なるGPUを製造する半導体会社ではなく、フルスタックのプラットフォーム企業であり、アクセラレーテッド コンピューティングを推進する企業です」と同社の位置づけを強調した。
2005年から続く菱洋エレクトロとのパートナーシップを基盤に、今回のプログラムでは特に生成AI向けの高速データセンター「ファクトリーAI」の実現と、近年重要性を増す「ソブリンAI」への対応を重視している。NVIDIAのエコシステムは現在、540万人の開発者、4万社の企業、4,000を超えるアプリケーションにまで拡大しており、この基盤を活用した包括的な支援を提供していくという。
AI人材育成と技術支援の具体的アプローチ
プログラムの第三の柱となる人材育成と技術支援については、レトリバの田口氏が詳細を説明した。同社は2016年にPreferred Infrastructureからスピンアウトして設立され、機械学習や自然言語処理分野で豊富な実績を持つ。
「今回の協業では、NVIDIA社のGPU開発技術、菱洋エレクトロ社のGPU提供実績、そしてレトリバのAI活用知見を掛け合わせることで、GPU×生成AIの領域でNo.1となり、日本企業のAI活用を加速させていきます」と田口氏は意気込みを語る。
具体的な支援プログラムは、戦略編、技術編、実践編の3段階で構成される。戦略編(講義型)では企業競争力向上を目指し、製造業におけるAI導入事例やプロジェクト進行方法を学べる。オンライン形式で60万円(税別)から、オフライン形式で70万円(税別)からの料金設定となっている。
プログラムでは、NVIDIA AI Enterpriseなどのミドルウェアを活用し、菱洋エレクトロが提供するサーバー環境とレトリバによるAI活用支援を組み合わせたトータルサポートを実現。さらに、YOSHINAサーチなどのアプリケーション技術支援も提供することで、生成AIの導入を包括的にサポートする体制を整えている。
菱洋エレクトロは12月中旬からフォローアップセミナーの申し込み受付とパートナー募集を開始し、検証プランの実施を順次進めていく予定である。